2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳細胞内の機能的タンパク質複合体を対象としたin-cell NMR法の開発
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11J11066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 智史 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | In-cell NMR / CLIP-170 / 微小管 / TCS法 |
Research Abstract |
本年度は、微小管結合タンパク質であるCLIP-170のCG1ドメインを細胞内に導入し、細胞内微小管との相互作用を観測対象として、細胞内におけるTCS法、つまりin-cell TCS法を確立することを目指した。まず、TCS実験は高濃度の重水存在下で行う必要があるため、どの程度の重水濃度において細胞のin-cell NMR測定が可能かどうか調べた。その結果、50%の重水存在下であれば、18時間の測定を行ってもほとんど細胞死は誘導されないことが分かった。また、TCS実験は、通常のNMR測定と比較して、長時間の測定時間を必要とする。その間には、サンプル管内の細胞環境が悪化してしまうため、長時間のin-cell NMR測定を行うことは困難である。そこで、サンプル管内の細胞懸濁液に対して、細胞の培養培地であるDMEM培地を還流させる装置を開発した。さらに、培地の還流を行ってもサンプル管内の細胞が流動してしまわないように、細胞はMebiol gelを用いて固定化した。Mebiol gelは細胞の3次元培養などに用いられている温度可塑性ポリマーである。サンプル管内の細胞懸濁液をMebiol gelでゲル化する際には、ゲルがコイル状となるようにおこなった。それにより、ゲル化後も、培地の還流経路を保つことに成功した。還流が細胞に与える影響を細胞内ATP濃度を指標に調べたところ、還流を行うことによって測定後、5時間経過後も80%の細胞内ATP濃度を保つことに成功した。 開発した装置を用いてCG1と内在性微小管との相互作用を観測するため、細胞内分子を対象に行うTCS実験、in-cell TCS実験を行った。その結果、CG1のL77,I90,L92,V103,I117において顕著な強度減少が観測され、これらの残基はCG1上の一定の部位に存在していた。以上より、本年度の研究における目的である、細胞内の分子を観測対象とするTCS法の確立を達成することが出来たと結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の研究計画であるin-cell TCS法の開発を達成するために、NMR管の内部のDMEM培地を還流させる装置を開発した。この還流装置は、in-cell TCS法を実現させることに寄与しただけでなく、その他のin-cell NMR測定において、NMRサンプル管内の細胞の生存率を向上させることが出来るため、当初の目的以上の成果をもたらしたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
In-cell TCS法において観測された相互作用が、CG1との微小管との相互作用を反映しているどうかを調べる。そのために、微小管との親和性が低下したCG1変異体などを用いたコントロール実験を行う予定である。
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Research Products
(1 results)