2011 Fiscal Year Annual Research Report
黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディング能力調節に与る分子機構の解明
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11J11070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大前 陽輔 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / コロニースプレッディング / 移動能力 / 細菌学 / 病原性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、黄色ブドウ球菌が軟寒天上を滑走する移動能力であるコロニースプレッディング能力について、その分子機構を明らかにすることと、黄色ブドウ球菌の病原性発揮における意義を明らかにすることである。 本年度において研究代表者(大前陽輔)は、代表者が黄色ブドウ球菌の細胞外分泌因子の中からコロニースプレッディング阻害因子として精製・同定したδ溶血毒素に立脚し、コロニースプレッディング能力の分子機構の解析を行った。そして、具体的には、コロニースプレッディング阻害活性を失活させた変異型δ溶血毒素を作出し、それを用いた解析を行った。この解析により、δ溶血毒素の界面活性が黄色ブドウ球菌の細胞間の相互作用を低下させることでコロニースプレッディングを阻害させることを示唆する結果を得た(研究発表、雑誌論文1件目)。 また、δ溶血毒素の解析とは独立してコロニースプレディング促進に与る因子の同定、遺伝学的解析を行い、黄色ブドウ球菌の分泌するヌクレアーゼによる細胞外DNAの分解がコロニースプレッディングに必要である事(研究発表、雑誌論文2件目)、細胞外の糖を認識して黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディング能力が促進されることを明らかにした(研究発表、雑誌論文3件目)。 これらの成果は、黄色ブドウ球菌の移動能力に与る分子機構を初めて明らかにしたものとして重要である。細菌の移動能力は自己の増殖可能領域の拡大につながり、細菌が病原性を発揮する上で重要と考えられる事から、今後黄色ブドウ球菌感染における上記同定した因子、機構の意義が明らかにされる事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的は2点あり、1点目である黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディング能力の分子機構の解明については、分子の同定、解析が進み、成果の雑誌論文発表にも至ったことからおおむね順調に進展していると判断できる。今後は、研究目的の2点目であるコロニースプレッディング能力の黄色ブドウ球菌の病原性発揮における意義について解析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでに同定したコロニースプレッディングに寄与する遺伝子を欠損させた黄色ブドウ球菌株を用いてマウス個体に対する感染実験を行うことにより、黄色ブドウ球菌の宿主に対する病原性におけるコロニースプレッディング能力の必要性について検討する。これにより、コロニースプレッディング能力について、黄色ブドウ球菌感染のどのような局面において重要であるかを明らかにすることが期待される。
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