2012 Fiscal Year Annual Research Report
セルクロマトグラフィーによる循環腫瘍細胞の量的・質的評価法の開発
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11J11150
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
細川 正人 静岡県立静岡がんセンター(研究所), 新規薬剤開発・評価研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 循環腫瘍細胞 / 血液 / がん |
Research Abstract |
本研究では、細胞の機械的強度や流動性などの物理的特性に基づいて、がん患者血液から循環腫瘍細胞(CTC)を分離・検出するセルクロマトグラフィー技術を開発することを目的としている。また、回収したCTCの二次解析から、CTCの量的評価のみならず質的評価についても検討することを目指している。 昨年度までに、セルクロマトグラフィーデバイスの開発とCTCの高感度検出のための基礎検討を行った。この検討をもとに、静岡がんセンターにて臨床検体を対象とした試験を開始した。この結果、本デバイスは従来の抗原抗体反応に基づくCTC回収法よりも優れた回収性能を有している事が実証された。本デバイスはマイクロサイズのフィルターを用いて血球を分離し、血球に比べてサイズの大きなCTCを分離する原理を採用しており、従来の免疫磁気分離法では回収困難な細胞も高効率に回収することができる。しかし、小細胞肺がん等の小径の腫瘍細胞を対象とした場合には、他の癌腫に比べて回収率が低下することが示唆されていた。 そこで本年度は小径の腫瘍細胞を捕獲可能なフィルター構造の検討を行った。従来のフィルター構造は丸型の孔を採用していたが、新たに長方形の微細孔を採用した。高い開孔率を持つことから血液フィルトレーション時の差圧上昇を抑制し、安定したフィルトレーションを実現可能となった。この結果、従来の丸型孔に比べて、小径の腫瘍細胞回収率を20%以上向上させることができた。また、フィルトレーション時に生じる細胞の変形と細胞内骨格の関連性を検討した。この結果、がん細胞MCF-7は正常細胞MCF-10と比較して吸引圧に対して変形を受けやすいことが示された。このような変形能の差異は、細胞骨格タンパク質及び核構造タンパク質の発現量に依存する事が推察され、本デバイスを用いた細胞変形長の測定は、細胞の浸潤性などの質的評価へ応用が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度内に、セルクロマトグラフィーデバイスに回収した細胞の2次的解析法を検討し、がん細胞の質的評価を行うことを目的とした。この結果、回収した細胞に生じる形態変化と細胞内骨格タンパク質の発現に相関性があることが示唆された。本手法は、がん細胞の浸潤性などの質的評価への応用が期待できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度からCTC回収の精度を向上させるとともに、細胞の形態変化の評価法を確立した。この結果、回収した細胞に生じる形態変化と細胞内骨格タンパク質の発現に相関性があることが示唆された。今後は本手法が、様々な癌種に対応できることを示しつつ、CTCの有する遺伝子変異解析を推進する。単一の細胞からがん遺伝子の発現や変異を検出するために全ゲノム増幅法などを用いた解析について検討する。以上のように、最終年度は分子生物学的アプローチを用いて細胞内の遺伝子変異を捉える手法の開発に注力する。
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Research Products
(4 results)