2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗動脈硬化症薬開発を志向した脂質輸送担体の分解を司るユビキチンリガーゼの探索
Project/Area Number |
11J11195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 忠快 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ABCA1 / Ubiquitin / Atherosclerosis / ESCRT |
Research Abstract |
本研究では、これまでに私が見出した、細胞膜上ABCA1のユビキチン化を介したリソソームでの分解経路を制御することでABCA1の発現量、ひいては機能上昇を狙い、新規抗動脈硬化症薬の創薬ターゲットを提示するため、ユビキチン化において、その反応に特異性を与えるとされるユビキチンリガーゼ(E3)の同定を目的としている。ABCA1はマクロファージにおいても抗動脈硬化因子として重要な働きをしていることが示唆されている。そこでまずは、当該分解経路の肝臓以外の臓器での重要性を調べるため、ヒト単球由来のマクロファージ様細胞である、THP-1細胞において、ESCRT系の主要なタンパク質であるHRSをノックダウンし、その細胞全体、および細胞膜上発現量をWB法により解析したところ、ABCA1の発現量はともに増加した。この結果は、肝細胞由来の不死化細胞であるHuH-7細胞を用いた際に得られた結果と同じ方向性であり、またTHP-1細胞においても典型的なリソソーム阻害剤であるNH4Cl処理によっても細胞全体で発現量が上昇したことを考慮すると、細胞膜上ABCA1のユビキチン依存的なリソソームでの分解は、マクロファージ細胞においても機能しているものと推察される。また、ABCA1の分解経路としてはカルパインによる分解経路が報告されている。そこで同経路とユビキチン化依存的なリソソームでの分解経路とが独立であるか否かを調べるために、典型的なカルパイン阻害剤であるcalpeptin処理下においてHRSをノックダウンし、細胞膜上ABCA1の分解への影響を検討した。その結果、カルパイン阻害条件下においても細胞膜上ABCA1の分解は有意に減少し、これに伴い細胞膜上ABCA1の発現量が増加することがわかった。これらの結果は、これまでの結果と合わせ、Hepatologyに採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2)ABCA1のユビキチン化を担うユビキチンリガーゼの探索には当初96ウェルスケールのハイスループットスクリーニング可能な機能評価系を用いて行う予定であったが、測定機械の故障により遂行が困難となった。そこでアプローチを変更し、免疫沈降等を用いて精製したABCA1の相互作用タンパク質群を、LC/MS/MSを用いて解析し、目的とするユビキチンリガーゼの同定を行うこととしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
LC/MS/MSを用いた相互作用タンパク質群の解析では、多くの候補相互作用タンパク質から、いかにして目的のユビキチンリガーゼを絞り込むかという点がもっとも困難であると推察される。そのため、まずはABCA1のユビキチン化度合に変化を与えるパーターベーションの探索を第一の目標に定めた。これまでに文献報告に基づき、ABCA1の分解に影響を与える化合物処理を試したが、明確な差は得られず、このアプローチは断念した。現在は、ABCA1のユビキチン化に重要なドメインの同定を試みている。欠損変異体発現ベクターを作製し、それらのユビキチン化度合を野生型と比較することで行っており、これまでにユビキチン化度合に影響を与えるドメインを二箇所見出している。
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Research Products
(2 results)