2011 Fiscal Year Annual Research Report
人為環境下で野生生物はどのように家畜化していくか? その方向と速度を探る
Project/Area Number |
11J11226
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
栗和田 隆 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 交尾行動 / 近親交配 / 共生細菌 / 大量増殖 / 不妊虫放飼法 |
Research Abstract |
昨年度はこれからの研究に用いる実験集団の確立を目的に実験をおこなってきた。その過程で研究対象種のアリモドキゾウムシとイモゾウムシの種間関係の解明をおこない、両者が共通の資源であるサツマイモを巡り強い競争関係にあることを発見した。これは両種の防除戦略を構築する上で重要な情報となる。この成果は直ちに論文化し、現在Jornal of Applied Entomologyに投稿している。また、イモゾウムシでは近親交配による害(近交弱勢)が極めて弱く、野外で交尾相手と出会えない場合には近親交配をおこなうことで子孫を残していることを示唆できた。この結果は、従来回避することが適応的だと考えられてきた近親交配を受け入れた方がむしろ適応的であるケースもあることを実証したものである。この内容は動物有動学の国際誌であるEthologyに掲載された。 本研究課題のメインテーマである害虫の家畜化に関しては、アリモドキゾウムシの産卵スケジュール及び精子の利用性が大量増殖環境に適応進化することで野外の個体群とは全く異なっていることを示すことができた。この成果は日本生態学会で発表をおこなっており、現在論文を執筆している。また、これまでおこなってきた家畜化に関する研究をまとめた総説を執筆し、植物防疫誌に掲載されることが認められた。この他に不妊虫放飼法による害虫防除をおこなう上で必須となる放射線による不妊化法の改良に取り組み、従来よりも虫の害にならない照射技術を共同研究者らとともに開発した。この成果は3報の論文とし国際誌に掲載された。さらに、イモゾウムシ細胞内に生息する共生細菌が、宿主であるイモゾウムシの交尾成功を上昇させていることを発見し、個体群生態学会大会で発表をおこなった。現在、より正確な実証データを得るために追加実験をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度にもかかわらず,既に,ゾウムシ類の大量増殖の際の虫質管理に活用できる多くの研究成果が得られている。これらの成果はいち早く学会や研究会で発表するとともに,原著論文としてとりまとめて投稿した。本年度の研究成果として,共同研究者との共著も含めると,既に国際誌4報,国内誌1報に原著論文が掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も引き続き、大量増殖過程における害虫の適応進化を、交尾行動を中心として解明していく方針である。今年度は研究対象を世代期間の長いゾウムシ類に留めず、より世代期間が短く進化実験をおこないやすいナスミバエを用いた実験も計画している。ナスミバエは沖縄本島における新規侵入害虫であり、その生態の解明は応用昆虫学的にも重要度が高いと考えられる。
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