2012 Fiscal Year Annual Research Report
海馬CA1樹状突起の情報統合における入力間相互作用と情報処理機能の解析
Project/Area Number |
11J11250
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
近藤 将史 玉川大学, 脳情報研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海馬 / CA1野 / 樹状突起 / 抑制性介在細胞 / 膜電位感受性色素 |
Research Abstract |
海馬CA1野錐体細胞の樹状突起には,CA3野からの興奮性入力および抑制性介在細胞からの抑制性入力が投射している.これらのシナプス入力は樹状突起の空間的広がりに伴って,それぞれの場所において異なる統合様式を示すと考えられる.事実,電子顕微鏡を用いた先行研究において,樹状突起に沿って興奮・抑制性シナプス数の比率が,細胞体からの距離に依存して全く異なることが示されている.しかしこの報告は細胞活性を失った固定試料によるシナプス数の計測にとどまっており,実際の神経回路中でどの程度のシナプス入力があり,樹状突起においてそれらがどうのように統合されているかは一切不明であった. そこで今回膜電位感受性色素を用いた光イメージングを行うことで,実際の興奮性・抑制性シナプス入力統合がCA1野樹伏突起においてどのように行われているかを,シナプス前・後細胞の相対活動タイミングに注目して検討した. その結果として,以下の点が明らかとなった. 1.シナプス前細胞が後細胞より先に活動する場合,フィードフォワード抑制入力が後細胞の活動によって樹状突起に誘起される逆伝搬活動電位の振幅を抑圧し,その到達距離を調節する.またそれは活動タイミングに依存して変化する. 2.シナプス後細胞が前細胞より先に活動する場合,フィードバック抑制入力が前細胞の活動によって樹状突起に誘起される興奮性シナプス後電位の振幅を大幅に抑圧する. 以上の結果は,樹状突起の膜電位が,シナプス前・後細胞の活動タイミングに依存してダイナミックに変化することを示している.また逆伝搬活動電位の到達距離が調節されることによって,樹状突起におけるヘブ型学習が樹状突起のどの位置で可能となるかを決定しうると考えられ,神経細胞が空間素子である特性を記憶情報処理にうまく利用している可能性を示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の研究計画にしたがって研究が進んでおり,それに対する成果も同時に得られているのため,順調に推移していると考えている.今後は可能な限り早い段階で,平成24年度の研究成果を学術論文としてまとめることを目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
本来の研究計画に則り研究を進める。平成24年度の研究成果については若干の追加実験を行い,学術論文としてまとめる予定である.平成25年度には新しい方針として,コンピュータシミュレーションを用いて生理実験では行うことが難しい条件設定の実験を行い,それを加えて最終年度のまとめとする.
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Research Products
(8 results)