2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J11252
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Research Institution | Ueno Gakuen University |
Principal Investigator |
中本 真人 上野学園大学, 日本音楽史研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 御神楽 / 賀茂臨時祭 / 石清水臨時祭 / 競馬負方献物 / 儀礼 / 音楽史 / 歌謡 / 芸能史 |
Research Abstract |
本年度は、9世紀における御神楽の先行儀礼、および10世紀の宮廷の御神楽の展開について研究成果をあげた。 まず、御神楽の先行儀礼についてだが、特に9世紀における競馬負方献物に注目して、研究を進展させた。競馬負方献物とは、5月6日の競馬の負態として、諸衛府・馬寮が行った献物である。9世紀を通して断続的に行われ、飲酒歓楽の自由な雰囲気の中で、天皇および親王・公卿が音楽・散楽を楽しんだ。特に仁和元年の競馬負方献物では、親王・公卿たちが紫宸殿の殿上で衞府の音楽・散楽を見物したあと、日暮れ後に紫宸殿を降りて庭上に移り、飲酒歓楽の中で歌舞を行っている。『日本三代実録』では、この飲酒・歌舞を「神楽」と呼んでおり、特に親王・公卿らが参加した歌舞として注目される。この問題については、日本歌謡学会秋季研究発表会(平成24年11月11日)にて口頭発表を行った。 さらに、10世紀の宮廷の御神楽について、特に賀茂臨時祭の還立の御神楽と、石清水臨時祭の社頭の御神楽とを比較研究した。これまで同質性ばかりが注目されていた賀茂臨時祭と石清水臨時祭について、御神楽の場の相違に着目した。そして、この相違は同時代の摂関神社詣による影響の可能性が高いことを指摘した。この成果は、「臨時祭の御神楽―賀茂臨時祭から石清水臨時祭へ―」(日本歌謡学会『日本歌謡研究』第52号)にて公表している。 なお、本年度は博士論文「宮廷の御神楽と楽人」によって、慶應義塾大学より博士(文学)が授与されている。同論文については、さらに加筆修正を行った上、数点の論考を新たに加えて、中本真人著『宮廷御神楽芸能史』(新典社・平成25年刊行予定)として出版される予定である。本書の出版により、9世紀の先行儀礼から中世初期にかけての、宮廷の御神楽に関する本格的な基礎研究が世に提示されることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで10世紀以降の宮廷の御神楽の展開について、集中的に研究成果をあげてきた。本年度からは、9世紀の御神楽の先行儀礼についても視野に収め、確実に研究成果をあげることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに宮廷の御神楽の先行儀礼に関する研究を開始しているが、なお宮廷の御神楽そのものに対する基礎的研究に多くの課題を残している。平成25年度は、斎院御神楽に関する基礎的考察を行い、その研究成果の一部は、『アジア遊学寺社圏論のパースペクティヴ(仮)』(勉誠出版)で公表する予定である。
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Research Products
(3 results)