2013 Fiscal Year Annual Research Report
細菌細胞壁分解によるタイプIII分泌系の膜内ソーティング機構に関する構造生物学
Project/Area Number |
11J40009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 如江 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | スフィンゴモナス属細菌 / フラジェリン / ペプチドグリカン / べん毛 / X線結晶構造 |
Research Abstract |
スフィンゴモナス属細菌A1株のフラジェリン(p5、p5'、p6)およびFlgJ(ペプチドグリカン分解活性を持ち、べん毛基部体形成に必須)に焦点を当て、フラジェリンの発現・分泌機構を分子生物学と構造生物学の観点から解析し、以下の知見を得た。 A1株のフラジェリン遺伝子破壊株を作製し、べん毛形成性と運動性の評価を行い、①p5のみ(A1△p5'p6)でもべん毛を形成するが、P5'のみ(A1△P5P6)やP6のみ(A1△P5P5')ではべん毛が形成できないこと、②べん毛を形成した場合でも、p6を欠失すると運動性が消失することを示した。これらは、運動性の発現のためにはフラジェリンのヘテロ性が重要であることを意味する。また、A1株ゲノムに含まれる2セットのべん毛遺伝子群(セットA、セットB)のうち、セットBに含まれるフラジェリン(p6)は細菌側毛フラジェリンと相同性を示すこと、セットB遺伝子クラスターは細菌側毛遺伝子クラスターと類似した構造をとっていることを見出した。これらのことから、A1株のべん毛遺伝子セットBは側毛形成性の遺伝子セットであると位置づけた。分画したべん毛繊維からはp5、p5'、p6タンパク質が同定されたことから、A1株のべん毛繊維は、側毛型および非側毛型フラジェリンで構成されることがわかった。 FlgJは、べん毛基部体の構築に関与するN末端ドメインとペプチドグリカン分解活性をもつC末端ドメインから成る。C-末端8残基を欠失させた変異体(SPH1045Cd8)の結晶構造を分解能1.8Åで決定した。これまで不明瞭であったループ構造(Glu224-Arg230)がSPH1045Cd8で新たに見出された。このループにより形成されるトンネル様構造に、結晶化剤中のHEPES分子が結合していた。HEPES分子存在下では本酵素活性が顕著に阻害されるため、ループを含むクレフトが活性部位として機能することが示された。本ループの可動性が巨大な基質(ペプチドグリカン)の活性部位への固定と分解物の遊離を可能にしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、A1株の極単毛の繊維が側毛型および非側毛型のフラジェリンで形成されること、並びに繊維におけるフラジェリンのヘテロ性が運動性発現に重要であることを明らかにした。また、細菌のペプチドグリカンを分解することによりべん毛基部体(タンパク質分泌装置)の形成を可能とするFlgJの結晶構造解析を行い、巨大な基質(ペプチドグリカン)に対する結合と分解に必要な構造変化を見出した。今回A1株で見出されたべん毛は、側毛型と非側毛型フラジェリンの複合型である点において新規性があり、細菌べん毛の多様性を裏付けるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2セットのべん毛遺伝子群が一本の極べん毛を形成する機構を明らかにするため、基部体を含めたべん毛の構成因子を同定するとともに、各べん毛遺伝子の転写制御機構について調べる。
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Research Products
(7 results)