2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J40018
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉野 紀美香 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 脊髄損傷 / マーモセット / 運動機能解析 / 皮質脊髄路 / 神経トレーサー / 軸索再生 / 歩行キネマティクス / 神経可塑性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マーモセット脊髄半切モデルにおいて、新生軸索の伸展を阻害するセマフォリン3Aの選択的阻害剤の治療効果を確認するとともに、運動機能が回復した個体について脊髄内での軸索走行の変化を組織レベルで解析することである。方法は電気生理的に一次運動野の上肢及び下肢の制御領域を同定し、同定した箇所に神経トレーサーを注入し皮質脊髄路を可視化する。23年度は健常マーモセットにおける皮質脊髄路神経の解剖学的な解析を終えた。これは脊髄損傷モデルとの比較において基礎データとなる。さらに第4/5頚髄半切モデルマーモセットでは、自然回復(無治療群)過程の運動機能評価を行い機能回復に寄与したであろう軸索の可塑的変化を追跡した。25年度に着手する薬剤治療とリハビリテーション付加の併用療法を検討するにあたって、運動機能の回復を詳細に評価するシステムが必要である事が分かった。そこでMIKYテストに加えて高速ビデオカメラによる把持動作の追跡、垂直ラダーテスト、歩行キネマティクスの解析を行った。一般的に行われているMIKYテストでは検出出来なかった運動回復の軌跡が、これらの動作解析を組み合わせる事で明確に捉えられた。自然回復群における軸索の可塑的変化は、未定量ながら損傷側脊髄の灰白質において神経終末形成を増加するという形で起こっていると示唆されるデータが得られた。もともと健常マーモセットにおいて顕著に認められる両側投射している軸索が、損傷した機能を補うよう投射先を増やしたと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マーモセット脊髄損傷モデルに対して軸索伸展阻害因子の阻害剤を用いる薬剤投与群では、第415間での頚髄損傷手術による障害度に大きなばらつきがみられた。薬剤効果を検討する上では、標準となる脊髄損傷モデルの作製が必須であるため調整に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄半切手術による損傷度のばらつきが、軸索伸展阻害因子の阻害剤の効果を検証する上で問題となっている。当初の研究計画には挙げていなかった多角的な運動機能解析は、MIKYテストでは見逃していた回復の起始点をとらえ、薬剤の効果を検討するいい指標となると期待している。また脊髄損傷側を制御しているはずの対側の一次運動野では著しく手足の制御領域が消失しており、機能回復がどの神経新生によりもたらされたのかを追求する必要がある。そこで今後は覚醒下にて運動遂行中の一次運動野の活動を硬膜上に留置するECoG電極にてモニターする計画を加える。また脊髄の定量解析についてはステレオタキシックに定量化するシステムを導入し効率よく解析する方向で進めていく。
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