2011 Fiscal Year Annual Research Report
循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRの構造的理解と機能性抗体の合理的な創出
Project/Area Number |
11J40150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
万木 貴美 京都大学, 医学研究科, 研究員
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Keywords | 循環調節ホルモン / GPCR / リガンド / 結晶構造解析 / 機能性抗体 |
Research Abstract |
万木らの開発したGPCRの大量生産技術を用いてそれに対する構造認識抗体を創出し、この抗体フラグメントと循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRとの複合体の結晶構造解析を行う。同時に、これらのGPCRの機能アッセイを組み合わせることにより、ターゲットGPCRの機能を選択的に制御する機能性抗体の作製を行い血管合併症の新規治療法開発を目指すことを目的としている。 親水性領域が少ないGPCRは、結晶格子が形成されにくいため、そのままでは結晶化が非常に困難である。そこで、親水性表面の立体構造を特異的に認識して結合するモノクローナル抗体を作製する必要がある。岩田らは既に世界で初めてモノクローナル抗体を「結晶化リガンド」として利用し、細菌シトクロム酸化酵素の立体構造を解析することに成功している(Iwata et al., Nature, 1995)。この手法は、抗体が結合することによって、膜蛋白質のある特定のコンフォメーションが安定化されるとともに、膜蛋白質/抗体複合体の全体としての親水性表面が拡大して結晶性が向上するという原理に基づいている。万木らの意図する「結晶化リガンド」とは、次の条件をクリアするものである。 ■GPCRの親水性表面の立体構造を特異的に認識し、親水性領域を拡張するとともに、膜蛋白質分子に構造的なゆらぎ(動的構造)が生じないようにある特定のコンフォメーションに安定化する。 ■膜蛋白質の部分的な一次構造(ペプチド配列)に特異的に結合するようなものではない。 ■膜蛋白質との親和性が高い(nMオーダーの解離定数)。 旧来の抗体作製法では免疫細胞が生体内で行っている抗体産生・選択系に依存しすぎていたため、上記の条件を満たすような結晶化リガンドが得られるか否かという点は蓋然性に期待する面が大きかった。特にヒトや哺乳類の蛋白質は抗原性が低く、旧来法では良好な結晶化リガンドの得られる確率は非常に低かった。これまでに、万木らは任意の膜蛋白質に対して高い特異性と親和性を兼ね備えた抗体を創製する一連の技術を確立している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アデノシンA2a受容体を不活性型に固定化する抗体と受容体の共結晶化を行い、分解能3.1Aで結晶構造を決定し、論文にまとめた(Nature 2012)。現在、循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRの発現、精製を試みているが、予想以上に不安定なため単一に精製できない。
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Strategy for Future Research Activity |
予想以上に循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRは不安定なため、大量発現、精製に苦戦している。そこで、C末端にGFPを結合させたGPCRを作製し、出芽酵母によるハイスループットスクリーニング系で安定化変異体の作製を試みている。出芽酵母は、相同組み換え活性が高いので、PCRフラグメントをいくつか用意することで簡単に変異体を作製することができる。
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Research Products
(3 results)