2012 Fiscal Year Annual Research Report
循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRの構造的理解と機能性抗体の合理的な創出
Project/Area Number |
11J40150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
万木 貴美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 循環調節ホルモン / GPCR / リガンド / 結晶構造解析 / 機能性抗体 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームでは、肥満とインスリン抵抗性を背景とする多くの代謝異常が重責し、心筋梗塞や脳血管障害、腎血管障害等が発症する。これらの血管合併症の発症および進展には、多彩な生理活性を有する循環・代謝調節ホルモンによる恒常性バランスの破綻が関与している。循環調節ホルモンの多くはG蛋白質共役受容体(Gprotein-coupled receptor : GPCR)を介して作用することが知られている。循環調節ホルモンの一つであるアドレノメデュリンは、強力な血管拡張作用による降圧物質として発見されたが、その後抗酸化作用、腎保護作用等の臓器保護作用も有することが明らかとなった。さらにアドレノメデュリン欠損マウスは、血圧の上昇に加えて、動脈硬化や加齢に伴う肥満、耐糖能異常等が認められる。これらの結果は、アドレノメデュリンがメタボリックシンドローム発症の分子基盤となっている可能性を示唆しており、その機能的・構造的理解は血管合併症の新規治療法に重要であると考えられる。血管合併症の治療には、これらの内分泌ホルモンおよびその関連因子の分子機構を理解し、メタボリックシンドロームの発症予防を含めた治療展開が必要となる。しかし、メタボリックシンドローム自体が多因子疾患であるため、いまだ不明な点が多い。そこで、万木らは循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRのX線結晶構造解析によって、血管合併症の包括的な理解と新規治療法の開発を目指している。万木らの開発したGPCRの大量生産技術を用いてそれに対する構造認識抗体を創出し、この抗体フラグメントと循環調節ホルモンをリガンドとするGPCRとの複合体の結晶構造解析を行う。同時に、これらのGPCRの機能アッセイを組み合わせることにより、ターゲットGPCRの機能を選択的に制御する機能性抗体の作製を行い血管合併症の新規治療法開発に繋げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
循環調節ホルモンをリガンドとするヒト・アンギオテンシン受容体AT2サブタイプを大量発現し、脂質二重膜中に精製受容体を埋め込んだプロテオリポソームを免疫した。リボソームELISA法と変性ドットプロット法を組み合わせることにより、受容体の立体構造認識する抗体を作製することができた。平成24年度は、アンギオテンシン受容体AT2サブタイプに過剰量の抗体を加え、ゲル濾過により受容体/抗体複合体のみを分離して、蒸気拡散法により結晶化条件をスクリーニングした。得られた結晶は微結晶だったので、ドロップをそのままマウントして、SPring-8のマイクロビームによるグリッドスキャンを試みた。その結果、分解能は低いが(~20A)回折像の認められる結晶化条件を絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト・アドレノメデュリン受容体であるカルシトニン受容体様受容体:CRLRやヒト・グレリン受容体GHSRについても同様に高発現株のスクリーニングを行ったが、野生型では不安定で発現量が高くないことが分かった。そこで、今後は受容体の熱安定性を向上するアミノ酸残基をアラニンスキャンなどの方法により、スクリーニングしたいと考えている。また、様々なリガンドについて深い知識を持ち、発現・精製した受容体の機能解析が行える研究グループとの共同研究が必要と考え、グレリンを発見した久留米大学の児島将康教授と共同研究をスタートした。次年度は、カルシトニン受容体様受容体、グレリン受容体の安定化変異体の作製と発現・精製した受容体の機能解析を行うことで、安定で活性を保持した受容体の結晶化条件のスクリーニングおよび受容体の立体構造を認識する抗体を作製したい。
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Research Products
(1 results)