2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物時計の進化にともなう時計タンパク質KaiBの構造と機能の変化
Project/Area Number |
11J40160
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村上 怜子 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 学術振興会特別研究員(RPD)
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Keywords | 概日リズム / 藍色細菌 / オリゴマー構造 / 生物時計 / KaiA / KaiB / 電子スピン共鳴法 / リズム |
Research Abstract |
生物時計は、昼夜の変化に適応するために、様々な活性を24時間周期で自律的に振動させる細胞内分子機構である。藍色細菌の生物時計はKaiA、KaiB、KaiCからなっており、ATP存在下においてこれらの3つのタンパク質が相互に作用しあうことで自律的な時間振動を生み出すことができる。KaiBは進化の初期では2量体であり、藍色細菌において時計として進化した結果、4量体を形成するようになったのだと考えられる。 相互作用に4量体構造が必要であるか否かを検証するために、電子スピン共鳴法によって、KaiB上のKaiAもしくはKaiCとの相互作用部位の同定を行った。電子スピン共鳴法はタンパク質にスピンラベルを導入し、スピンラベルの運動状態を調べることによって、スピンラベル近傍のアミノ酸残基の状態変化を解析する手法である。KaiAおよびKaiCともに、様々なアミノ酸残基でスピンラベルシグナルの変化が観察された。興味深いことに、KaiAおよびKaiCともに、E56-Y64のアミノ酸残基の多くで、スピンラベルの変化が生じた。今後、古細菌型KaiBの構造解析の知見を踏まえて、KaiAおよびKaiCとKaiBの相互作用と、KaiBのオリゴマー構造の関わりの検証を試みる。 続いて、4量体構造と機能の関わりを検証するために、2量体変異体KaiBを作製し、2量体変異体KaiBが時間発振に寄与できるか否かを検証した。C末端酸性残基(95-108)を欠失させた変異体KaiB、KaiB_<1-94>を作製した。KaiB_<1-94>は2量体と見積もられた。KaiB_<1-94>はin vitroで野生型と同様にリズム発振する機能があることが示された。In vivoでの遺伝子発現リズムを検証した結果、KaiB_<1-94>はリズムを発振する機能はあるものの、野生型KaiBに比べ振幅が弱くなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型は4量体である藍色細菌時計タンパク質KaiBの2量体型変異体(KaiB_<1-94>)の分離に成功した。そして、野生型KaiBと同様にKaiB_<1-94>が試験管内で時間振動を発振できることを明らかにした。これは、生物時計として機能するためには、KaiBが4量体である必要がないことを示しており、KaiBの進化を考える上で非常に興味深い結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究において、KaiB-KaiA間およびKaiB-KaiC間の相互作用に伴って構造が変化するアミノ酸残基を電子スピン共鳴法によって同定した。これが、KaiAおよびKaiCに対する相互作用機構とKaiBのオリゴマー構造との関わりを検証するためには、2量体型KaiBの構造解析およびKaiB-KaiC複合体構造の解析が必要である。また、23年度の研究において、藍色細菌の2量体型KaiB変異体を分離した。この変異体KaiBのより詳細な解析を通して、KaiBが進化の過程で2量体から4量体に変わった理由の解明を試みる。
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