2011 Fiscal Year Annual Research Report
真核由来葉緑体分裂因子と包膜脂質による葉緑体分裂制御機構の解析
Project/Area Number |
11J40167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 久美子 (岡崎 久美子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 葉緑体分裂 / 真核由来因子 / 膜脂質 / PDV2 / ホスファチジルイノシトール |
Research Abstract |
本研究では、葉緑体分裂の制御機構を、装置の真核由来因子と葉緑体膜脂質との相互作用に着目して明らかにすることを目指して解析している。PDV2がホスファチジルイノシトール4-リン酸(PI4P)と特異的な相互作用をすると考えられることから、葉緑体上でPI4Pを合成する酵素(PI4K)の探索を行った。PI4Kと考えられる4つの遺伝子のうち3つについて、蛍光タンパク質GFPとの融合タンパク質を一過的に発現させ、その細胞内局在を観察した。残りの一つについては得られたRNAのコードするタンパク質すべてが活性部位を保存していなかったことから偽遺伝子と結論付けた。3つのPI4K遺伝子のうち、ひとつは細胞膜上と細胞内の複数の輝点として観察され、過去の知見から細胞膜とトランスゴルジネットワークに局在すると考えられた。残りの二つは細胞質全体に局在が観察され、これらは葉緑体外包膜上のPIをリン酸化できる可能性が考えられるため、今後詳しく解析を進めていく予定である。現在、これら遺伝子の欠損変異体の入手手続き中である。またノックダウン変異体の作製も計画している。PI4Kの局在は葉緑体のPI4Pの働きを調べる上で重要な知見であり、今後の変異体の解析によって葉緑体分裂への関わりやそれ以外の役割などが明らかになると考えている。 PI4Pを可視化した植物体の種を分与してもらったので、それを使った解析も進行中である。PDV2遺伝子の破壊株や過剰発現体とのかけあわせを行い、葉緑体上のPI4Pの局在の状態などを調べる予定である。また、PI4Kの阻害剤を用いてPI4Pの葉緑体分裂への影響を調べる解析を行っており、小松菜の葉片を培養する予備的な実験を行っている。 PDV2のホモログであるPDV1についても、大腸菌で遺伝子を発現させるコンストラクトを作製し、現在タンパク質の精製を試みているところであり、脂質との相互作用を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物変異体の解析には時間がかかることを考え、2年次に計画していたPIP合成変異体の解析を前倒しして進めている。1年目に計画していた生化学的な解析はその分やや遅れているが、それは2年次に行い、PDV2のPI4Pとの結合部位を特定するというより発展的な解析を行う予定である。全体として、当初の計画と多少の順序の入れ替わりはあるものの達成度はほぼ計画通りであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究によって葉緑体のPI4P合成に関わる可能性のあるKinaseの候補を絞ることができたので、それらの変異体の解析に力を入れる。上記の通り2年目に持ち越した生化学的な解析もおこない、PDV2とPI4Pとの結合の詳細を明らかにする。PDV1についても脂質との結合実験を行い、それを糸口にPDV1を通じて葉緑体分裂に関わる脂質とその制御系、1と2との脂質を介した関係や役割の違いなどについて探っていくつもりである。
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