2012 Fiscal Year Annual Research Report
真核由来葉緑体分裂因子と包膜脂質による葉緑体分裂の制御機構の解析
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11J40167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 久美子 (岡崎 久美子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 葉緑体分裂 / 真核由来因子 / 膜脂質 / PDV2 / ホスファチジルイノシトール |
Research Abstract |
本研究では、葉緑体分裂の制御機構を装置の真核由来因子と葉緑体膜脂質との相互作用に着目して明らかにすることを目指して解析している。 分裂因子PDV2と相互作用すると考えられるPI4Pの合成酵素(PI4K)の阻害剤を入れた培地で野生型のシロイヌナズナを育成させたところ、細胞当たりの葉緑体数が増え、葉緑体の大きさが小さくなっていることが観察された。これはPI4Pの葉緑体分裂への関与を示す重要な結果であり、現在追試中である。この阻害剤の効果がPDV2を介しているか調べるために、PDV2過剰発現株、発現量が半減しているpdv2/PDV2へテロ欠損株、pdv1欠損株などを阻害剤存在下で育成する実験を現在進行中である。 昨年度の成果からPI4Kの候補として特定した2つの遺伝子の欠損変異体を入手した。一方の遺伝子は破壊株が致死であると考えられるため、薬剤誘導プロモーターで制御できるノックダウン変異体の作製を行った。また、GFPとの融合遺伝子の発現株や、PI4Kの過剰発現株の作製も進めており、現在育成中である。PI4Kの欠損及びノックダウウン株で葉緑体の分裂の促進、過剰発現株で葉緑体分裂の阻害などの表現型が観察されれば、阻害剤の結果と合わせて、PI4Kが葉緑体分裂を負に制御していることをしめすことができる。 PDV2の脂質との相互作用部位を特定する実験を進めている。葉緑体の膜間領域に露出していると考えられるC末領域を欠くタンパク質でも全長タンパク質とほぼ同じ相互作用を示す結果が得られている。このことから、PI4Pと相互作用しているのは細胞質側の領域であると考えられ、細胞質のPI4Kが葉緑体分裂に関わるPI4Pと相互作用しているという現在の仮説と合致する結果である。さらに相互作用する領域を狭めていく作業を進行中であり、相互作用部位を特定することでPDV2への理解が深まり相互作用部位を用いた解析等に使えると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠によるつわりによって一時研究が滞り気味になったが、その後、阻害剤実験で重要な成果を得ることができた。この成果を元にした組み換え植物の作製、PDV2タンパク質と脂質の相互作用部位の特定などの実験も順調に進んでいる。出産による研究中断後に速やかに再開できるよう準備を進めており、再開後も当初の計画通りに研究が進められると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PI4Kの阻害剤実験によって、PI4PがPDV2のはたらきを負に制御していると考えられるようになったことから、その仮説に沿って研究を進めていく。PI4Kの過剰発現株や発現抑制株などの単離を進め、仮説を支持する結果が順調に得られれば、それらを論文にまとめる作業に進む予定である。次の段階として、PI4PがどのようにしてPDV2を制御しているかを解析する必要があることから、その手がかりとなるような実験を計画し、進めていく。
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