2013 Fiscal Year Annual Research Report
真核由来葉緑体分裂因子と包膜脂質による葉緑体分裂の制御機構の解析
Project/Area Number |
11J40167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 久美子 (岡崎 久美子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 葉緑体分裂 / 真核由来因子 / 膜脂質 / ホスファチジルイノシトール / PDV1 / PDV2 / DRP5B |
Research Abstract |
本研究では、葉緑体分裂の制御機構を装置の真核由来因子と葉緑体膜脂質との相互作用に着目して明らかにすることを目指して解析している。 昨年度までに、葉緑体分裂装置の構成タンパク質PDV2がホスファチジルイノシトール-4-リン酸(PI4P)などのいくつかの脂質と特異的に結合することを見出した。今年度PDV1と脂質の相互作用を調べ、PDV2と同様にPI4Pとの特異的な相互作用を検出した。PI4キナーゼ(PI4K)の阻害剤を添加した培地で生育したシロイヌナズナでは、無処理のものに比べて細胞あたりの葉緑体数が増加し葉緑体が小さくなっていた。pdvl変異体を阻害剤処理した場合には葉緑体数の増加はごくわずかにしか見られず、pdv2変異体では増加が見られたことから、PDV1を介してPI4Pが葉緑体分裂を制御していることが示唆された。 シロイヌナズナに存在する4つのPI4Kのうち、2つのPI4Kが細胞質に局在していることを昨年度までに明らかにした。一方の遺伝子は破壊株が致死であると考えられるため、薬剤誘導プロモーターで制御できるノックダウン変異体およびGFPとの融合遺伝子の発現株の作製を24年度に行い、今年度はそれを用いた解析を行った。これらの遺伝子の欠損変異体および発現抑制株では細胞あたりの葉緑体数が増加しており、葉緑体分裂を制御するPIPシグナル経路の存在が裏付けられた。 シロイヌナズナをPI4K阻害剤で処理したとき、PDV1とPDV2のタンパク質量は無処理の場合と変わらなかった。しかし、PDV1とPDV2によって葉緑体にリクルートされる分裂装置のタンパク質DRP5Bの量は阻害剤処理によって増加することがわかった。GFP-DRP5Bの細胞内局在を解析すると、阻害剤処理によって葉緑体表面に局在するDRP5Bの量が増えていた。これらのことから、PI4PはPDVIと結合することで、PDV1とDRP5Bの結合の強さを変化させ、葉緑体にリクルートするDRP5B量をコントロールすることで葉緑体分裂を制御していることが示唆された。 これらの成果をまとめ、現在、学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PI4Pによる葉緑体分裂制御機構の詳細をこの1年で明らかにすることができた。PI4PがPDV1との結合を介してはたらいていることや、その制御機構がPDV1とDRP5Bとの相互作用を変化させて、葉緑体にリクルートされるDRP5Bの量をコントロールするというものであることがわかった。これらの結果をまとめた投稿論文は年度内に学術誌に受理されることはできなかったが、現在投稿中であり、近いうちに受理されると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿しており、その論文の受理のための補足実験、論文の修正などを最優先に進めていく。 PI4Pによる葉緑体分裂制御が植物の発達・生育や環境応答などとどのように関わっているのかを探るために、PI4KとGFPの融合タンパク質発現株やPI4Pバイオセンサーの発現株、PI4K遺伝子発現抑制株などの解析を行う。
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