Research Abstract |
従来よりFe_3Ptのマルテンサイト変態の規則度依存性は,次のように知られている.すなわち,規則度Sの増加にともなって,マルテンサイト相はBCC構造からBCT構造へ変化し,続いてS=0.75では軸比がc/a<1のFCT構造へと変化する.本研究員は,より高い規則度S=0.88のFe_3Ptのマルテンサイト変態を極低温におけるX線回折により調査し,その結果,S=0.75のFe_3Ptとは異なる軸比がc/a>1のFCTマルテンサイト相を見出した.この結果により,これまで不明であったSasakiandChikazumiが規則度を1としているFe_3Ptにおいて熱膨張および磁歪に見出した異常の原因を明らかにした.さらに本研究員は,0.75と0.88の間の規則度を有するFe_3Ptのマルテンサイト変態を調査した.その結果,S=0.81のFe_3Ptは,L1_2型母相からc/a>1のFCTマルテンサイト相を経て,斜方晶のマルテンサイト相へと2段階の変態を示すことを見出した.したがって,Fe_3Ptの低温相は,規則度Sの増加にともない,c/a<1のFCT構造から斜方晶を経て,c/a>1のFCT構造へ転移することがわかった.この挙動は,高規則度を有するFe_3Ptのマルテンサイト変態がバンド・ヤーン・テラー効果に起因することを示している.これは,完全規則度を有するFe_3Ptにおいてフェルミレベル近傍のエネルギーのピークが正方晶歪を与えると分裂することからも理解される.またさらに本研究員は,高規則度を有するFe_3Ptにおいてバンド・ヤーン・テラー効果に起因する弾性異常の存在を見出した.すなわち,FCT構造へマルテンサイト変態を示すFe_3Ptにおいて,弾性定数C'が変態温度に向かって異常に低下し,ほぼゼロとなることを見出した.この弾性異常が,巨大な磁歪の発現要因であり,インバー効果の起源となっていると考えられるが,詳細な調査は今後の課題である.
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