2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子線を用いた高分解能ハイパー核崩壊パイ中間子分光
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11J56062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永尾 翔 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハイパー核 / 崩壊パイ中間子分光 / 質量絶対値測定 |
Research Abstract |
申請者は、電磁生成したハイパー核の中間子弱崩壊により放出されるパイ中間子の運動量測定からハイパー核の質量を決定する実験を行っている。この実験は、ハイパー核分光として非常に新しい実験アイディアであり、~10keV/c^2という非常に高い精度でハイパー核の質量絶対値を決定できる実験である。 この実験の重要な点は、ハイパー核の質量を求めるためのパイ中間子の同定と運動量測定、ハイパー核生成を特定するためのK^+中間子の同定であり、高係数率下においてこれらを行う必要がある。これらの要求を達成可能な電子線としてドイツ・マインツ市にある連続電子線加速器MAMI-Cを用いた。また、パイ中間子の運動量測定用スペクトロメータとしてSpek-C、K^+中間子同定用スペクトロメータとしてKaosを用いた。 実際に現地に渡航して検出器開発、実験準備、データ収集を行った。5月から2週間、7月から2週間、11月より3週間、崩壊パイ中間子分光実験のテスト実験を行った。その間にエアロジェル検出器やタガー検出器の開発、設置を行った。また、これら実験の解析を行い、Spek-C側の係数率が低く、パイ中間子の弁別・運動量測定が可能なことを明らかにした。これにより、崩壊パイ中間子分光実験が十分に可能な実験であることが分かった。しかし、標的前方に設置したKaosの係数率が高く、セットアップの改善、エアロジェル検出器の改善が必須であることも分かった。 これら研究成果は、ドイツ・GSIで開催された「核物理に関する放談会」、弘前の「日本物理学会秋季大会」イタリア・トレントの「ETC*」、米国・JLabの「HKS/HES Collaboration Meeting」、仙台の「SNP School 2012」、神戸の「日本物理学会春季大会」において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年秋に崩壊パイ中間子分光実験の本格的な実験を行うことが決まった。2011年に取得したデータから、パイ中間子の同定・運動量測定及びK^+中間子の同定を行うことに成功し、また実験までに行うべき改善点が明らかになるなど、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年秋に崩壊パイ中間子分光実験を行う。それに向けて、GEANT4コードを用いてシミュレーションを行い、最適な実験セットアップを決定する。また、想定以下の性能であったエアロジェル検出器の改善を行う。国内に持ち帰ったエアロジェルの部品の透過率測定、宇宙線測定などを行い性能評価をすることで問題点を明らかにする。データ収集のトリガー部分も新しいモジュールを導入することでデータ収集効率を高める。
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Research Products
(10 results)