2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類着床前胚の分裂停止および細胞死に関わる活性酸素シグナル経路の解明
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11J56123
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
角田 智志 山形大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 活性酸素 / 酸化ストレス / 着床前胚 / 細胞周期 / SOD1 |
Research Abstract |
本研究の目的は酸化ストレス蓄積による着床前胚の分裂停止機構およびアポトーシス誘導機構の解明にある。哺乳類着床前胚の体外培養は、体外という高酸素環境下で胚操作を行うことにより酸化ストレスが蓄積し、胚の分裂停止や死といった発生異常を引き起こす。生体内で不可避的に生じる活性酸素を消去する酵素であるSuperoxide dismutase 1 (SOD1)を遺伝子的に欠損した胚を用いたこれまでの研究で、酸化ストレスの蓄積が着床前胚の2細胞期発生停止を引き起こすことを明らかにした。本年度は酸化ストレス蓄積によって引き起こされる着床前胚の分裂停止機構をより詳細に解明することを目的とし、胚の細胞周期に着目し検討を行った。 体外受精後2細胞期で発生停止を示すSOD1欠損胚を用い、細胞周期進行の必須因子であるサイクリンA、サイクリンB、サイクリンD、サイクリンE、Cdc25Aと細胞周期阻害因子であるp16、p19、p21、p27の遺伝子発現量を半定量的PCR法にて野生型胚と比較した。その結果SOD1欠損胚は野生型胚に比べサイクリンD、サイクリンEおよびCdc25Aの発現量が顕著に減少した。同時に、細胞周期阻害因子であるp16、p21、p27の発現量増加が認められた。発現量低下がみられたサイクリンD、サイクリンEおよびCdc25Aは細胞周期のDNA複製準備期(G1期)およびDNA複製期(S期)に必要な因子であり、逆に発現量増加が認められたp16、p21、p27はサイクリンDおよびサイクリンEの抑制因子として細胞周期をG1/S期にて停止させることが知られている。これらの結果から、SOD1欠損胚が示す2細胞期発生停止はG1/S期の段階で起こっている可能性が強く示唆された。今後は定量的PCRによる詳細な発現量比較と、免疫プロット法によるタンパク質レベルでの発現量比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標であった哺乳類着床前胚の体外培養における分裂停止機構の解明について、遺伝子発現レベルでの証明および学会発表を行うことが出来た。さらに、次年度研究目標である哺乳類着床前胚の細胞死機構解明に使用する遺伝子改変動物の作出も完了しているため、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終目標の一つに哺乳類着床前胚の体外培養効率の向上に伴うヒト不妊治療の成績向上が挙げられる。本研究はモデル動物を用いた解析により一定の成果をあげているものの、ヒトへの応用の可否は未だ議論の余地がある。今後はヒトの不妊治療への応用をより強く意識し、現在確立している実験手技および精度の向上を図ることを目標に研究を推進していく。
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