2004 Fiscal Year Annual Research Report
三重項有機分子の安定化とその複合化による磁性分子素材の構築
Project/Area Number |
12002007
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
富岡 秀雄 三重大学, 工学部, 教授 (20024599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 康丈 三重大学, 工学部, 助教授 (70197185)
平井 克幸 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教授 (80208793)
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Keywords | 長寿命三重項カルベン / 速度論的安定化 / ジアゾ化合物 / 光分解 / ESR / SQUID / 高スピンポリカルベン / 有機磁性素材 |
Research Abstract |
三重項カルベンは高スピン有機分子の構成単位として有用であることが知られているにも関わらず、不安定であるため、これまで余り利用されてこなかった。我々は三重項カルベンをスピン源として利用する場合のこのような問題を解決するために、(1)三重項カルベンの安定化を行い、完全に安定なものを合成し、(2)それを構成単位として持つ安定な磁性有機分子を構築することを目的としてこの研究を開始した。 (1)三重項カルベンの安定化に関しては、ジアントリルカルベンの10位に嵩高い置換基を導入することによって、室温溶液中でも一週間以上も存在するほぼ完全に安定なものの合成に成功した。又、ジアゾ基を導入した後に更に保護基を被せると言う新しい手法によって幾つかの新しい構造の三重項カルベンの発生にも成功し、幾つかの知見を得た。更に、課題(2)との関連から、ジピリジルカルベンの立体保護による安定化も検討し、かなりの長寿命化に成功した。 (2)有機磁性体の発生源となるポリジアゾ化合物の合成を、園頭カップリング反応、鈴木カップリング反応及びアセチレンの金属触媒重合を用いて行い、その光分解によって発生したポリカルベンをSQUID測定により磁気的解析を行った。現在の所、最大スピン多重度は10程度と未だ低いが、連結π系とスピン中心間の距離を改良することにより、より高いスピン多重度が得られるものと考えられる。又、安定三重項カルベンに金属配位子としてピリジル基を導入し、これを銅イオンと錯化させることによって、安定なヘテロスピン系を構築することにも成功した。更に、機能性を持つ磁性有機素材として、フォトクロミズムを示すジアリールエテンへのカルベン前駆体の導入や、複数のジラジカル中心を持つπ系の基底多重度と構造の関連の解明も成果をあげることが出来た。 以上、当初の目標であった安定な三重項有機分子の構築はほぼ実現できたものと考えている。磁性有機分子の構築に関しては、前駆体合成の手法を確立出来たので、近い将来実現できる見通しは示すことが出来たと考えている。
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Research Products
(20 results)