2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12012206
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
井上 貴央 鳥取大学, 医学部, 教授 (20116312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 充香 鳥取大学, 医学部, 助手 (20325004)
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Keywords | 古人骨 / 山陰地方 / データベース / 弥生人骨 / 殺傷痕 / 脊椎カリエス |
Research Abstract |
今年度は、鳥取県青谷上寺地遺跡から大量の弥生時代後期後半(2世紀後半)の古人骨が発見され、山陰地方における日本人の成立を考える上で貴重な資料が得られた。このため、本研究は山陰古人骨のデータベース作成の一環として本遺跡の骨の検討に大きくシフトした。検出された人骨は5000点を超える。この人骨には、少なくとも65体の人骨が含まれており、男性骨が女性骨よりも多かった。年齢構成は、壮年が最も多く、ついで10才代の子供の骨が多かった。今回見つかった人骨はその場に埋葬されたものではなく、溝の中から全身骨格が散乱した状態で出土しており、今回の出土状況は極めて異例である。人骨を精査した結果、135点の人骨に殺傷痕が認められ(少なくとも10体分)、かなりの割合で骨にまで達する傷を受けていたことが判明した。また、これらの殺傷痕にはほとんど治癒傾向が認められず、即死状態であったと考えられる。殺傷痕のある人骨のなかには、骨盤に青銅製の武器が突き刺さったままのものが3例あり、その他の殺傷痕も戦いの結果生じたものと思われる。殺傷痕の認められた人骨の点数から見ると、これまで報告された弥生時代の損傷人骨の数をはるかにしのいでいる。また、これらの人骨の中には脊椎カリエスの症例が2例含まれていた。これまで本邦における最古の結核例は古墳時代の人骨で確認された3例だけである。今回の発見は、これまでの発見を約400年さかのぼり、わが国最古の古病理学的症例であり、今回発見された脊椎カリエスの症例は、日本における結核のルーツを考える上で貴重な発見といえる。弥生後期の人骨は、全国的に見ても発掘例が少ない。これまでにも殺傷痕の認められる弥生人骨が報告されているが、ほとんどが弥生中期までのものである。今回の人骨の属する弥生後期は、戦乱の時代であった弥生時代から古墳時代へ移行する前夜の様相を知る上でも考古学的に貴重な資料となるであろう。
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Research Products
(2 results)