2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12012217
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小山田 常一 長崎大学, 歯学部, 助手 (00244070)
|
Keywords | 弥生 / 渡来 / 齲蝕 / 咬耗 / 農耕 / 漁撈 |
Research Abstract |
北部九州および山口県地方からは渡来してきた人々、あるいはその子孫と考えられている弥生時代人骨が多く発掘されている。一方、遺跡の立地条件、埋葬方法等に関しては、北部九州と山口県地方の弥生遺跡で大きな違いが見られる。北部九州の遺跡は平野部にあるが、山口県地方の遺跡は海浜部にある。このことから北部九州の弥生時代人の生業は農耕であったと考えられており、一方、山口県地方の弥生時代人の主たる生業は漁撈であったことがうかがえる。また北部九州の埋葬様式はそれ以前には見られない甕棺という特異なものであるが、山口県地方のものは土壙墓がほとんどで、甕棺は出土していない。また北部九州と山口県地方出土弥生時代人骨は基本的にはよく似ているが、土井ヶ浜遺跡(山口県地方)出土の弥生時代人骨の顔は細くて華奢で、北部九州の弥生時代人の顔はやや横幅が張って、屈強という違いが認められる。生業の違い、埋葬様式の違い、そして骨形態に観られる相違点等を考えあわせると、北部九州の弥生時代人と山口県地方の弥生時代人は渡来してきたという意味では同じであっても、その源郷が異なるのではないかと考えられる。 そこで本研究では、生活の重要な部分である食習慣の影響を大きく受ける歯牙の咬耗、歯科疾患状況等に関して両集団の比較を行った。咬耗に関しては、北部九州の弥生時代人は咬耗が比較的弱かったが、土井ヶ浜の弥生時代人の歯は縄文人あるいは縄文系弥生時代人と同じくらい強く咬耗していた。また、歯科疾患状況に関しては、土井ヶ浜弥生時代人では若年者群から齲歯率、生前喪失歯率が高く、北部九州弥生時代人では高齢者群で齲歯率、生前喪失歯率が急増していた。この咬耗や疾病構造の違いは、両集団の食性を含む生活習慣が大きく異なっていたことを示しており、このことは両集団の源郷が異なることを示唆していると思われる。 今後は、この両集団の源郷を探っていきたいと考えている。
|