2000 Fiscal Year Annual Research Report
古代東北アジア諸民族の総合的研究・「魏志」東夷伝の検討を中心に-
Project/Area Number |
12012220
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田中 俊明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教授 (50183067)
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Keywords | 魏志 / 東夷伝 / 高句麗 / 〓 / 韓 / 倭人 / 民族誌 |
Research Abstract |
『魏志』東夷伝は、広く知られた倭人の条(いわゆる倭人伝)を含む、3世紀を中心とした東北アジア諸民族の貴重な民族誌である。具体的には、夫余・高句麗・東沃沮・〓婁・〓・韓・倭人の各条に分かれる。倭人について、ことに3世紀およびそれに先立つ時代の倭人について知るためには、それと深く関わりあったこれら諸民族について知ることが不可欠である。そこで、『魏志』東夷伝の精密な読解を進め、それに関わる調査・研究を集成・総合し、諸民族の実態を総合的に検討していくことが課題である。受領した科研費は、特定領域単年度を2年連続、というかたちであったが、2年かけて、課題を予定通りこなすことができた。昨年度は、夫余・東沃沮・〓婁について訳註を作成していたが、本年度は、残る高句麗・〓・韓・倭人について訳註を作成した。これでいったん完了したわけであり、あとはさらに調整した上で、公刊したいと考えている。ただし、夫余・〓婁・東沃沮は、現在の中国吉林省・黒龍江省からロシア沿海州におよんでおり、現地における調査状況の把握が依然として不充分であることを認識している。そこで、情報蒐集をも目的として、12年10月に中国遼寧省・吉林省・黒龍江省を踏査した(大学の研究費による)。同地方への踏査はこの9年間、毎年継続しているが、11年に引き続き、延辺地区も踏査した。延辺地区は東沃沮・〓婁・夫餘が角逐する地域と考えられる。発掘調査の事例もふえ、民族系統は不明ながら、民族帰属についての関心は高まっている。踏査は今後も継続し、現地の研究者と討議したい。科研費の旅費では、12年9月と13年3月に韓族の地、韓国を調査した。あわせて「古朝鮮から三韓へ」の通史を整理し、韓族のなかから成長する百済の後期時代(西暦538年以後)の王都防禦問題および、馬韓地域制圧に関連して、前方後円墳問題の被葬者をめぐる問題について考察した。
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[Publications] 田中俊明: "百済後期王都泗〓の防禦体系"国立扶餘文化財研究所編 泗〓都城と百済の城郭(単行). 133-154 (2000)
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[Publications] 田中俊明: "栄山江流域における前方後円形古墳の性格"歴史文化学会・本浦大学校博物館 編栄山江流域古代社会の新たな照明(単行). 195-211 (2000)
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[Publications] 武田幸男,田中俊明 ほか: "朝鮮史(世界各国史2)"山川出版社. 520 (2000)