2000 Fiscal Year Annual Research Report
対流圏イオンの化学過程:大気圧化学イオン化質量分析法への応用
Project/Area Number |
12018209
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
長門 研吉 高知工業高等専門学校, 機械工学科, 助教授 (80237536)
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Keywords | 対流圏イオン / 大気圧化学イオン化質量分析法 |
Research Abstract |
対流圏イオン反応の解析を行うために新たに開発したドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置について、実験室空気による試験測定を行った。正イオンでは反応時間30-500msの範囲で移動度スペクトルおよび質量スペクトルの測定を行った結果、NH_4^+(H_2O)_nからより陽子親和力の大きなピリジン類やアミン類へのプロトン移動反応が観測された。負イオンについては反応時間20-100msの範囲で測定を行い、NO_2^-(H_2O)_n、HCOO-(H_2O)_n、COOHCOO^-(H_2O)_n、NO_3^-(H_2O)_nの4種類のイオンを検出した。これらの負イオンは正イオンに較べて水分子が多く結合したイオンクラスターとして検出されるため質量スペクトルは複雑であった。しかしながら水分子の結合したクラスターは大気圧中では短時間で平衡状態に達するため、移動度スペクトル中ではそれぞれ1本のイオンピークとして現れ、したがって質量スペクトルではわかりにくいイオン種の変化も、移動度スペクトルでは容易に解析できる可能性が明らかとなった。以上の結果から、本研究で使用したドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置は対流圏大気中における微量成分が関与するイオン反応過程を高感度で多面的に解析する基本性能を有することが確認できた。 一方、水蒸気を含む空気を放射線源を用いて電離すると、水蒸気が関与する一部のイオンー分子反応によってOHが生成されることがわかった。このOHはドリフトチューブ内でサンプル空気中の微量成分を酸化し、アーティファクトを生成している可能性があることが明らかになった。
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