2000 Fiscal Year Annual Research Report
M(dmit_2)系錯体の圧力下における電子状態;^<13>C-NMRによる解析
Project/Area Number |
12023245
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
開 康一 学習院大学, 理学部, 助手 (00306523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 利宏 学習院大学, 理学部, 教授 (60163276)
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Keywords | NMR / dimt / ダイマー(2量体) |
Research Abstract |
ジチオレン金属錯体、M(dmit)_2系、特にM=Pdの系である(Et_2Me_2P)[Pd(dmit)]と(Me_4P)[Pd(dmit)]の圧力下の電子状態を明らかにすることが本研究の目的である。1)常圧での両者の物性をNMRによって再確認し、2)Et_2Me_2P塩の圧力下でのセルフドーピングの可能性、に注目した。 常圧 ^<13>C NMR吸収線形はMe_4P塩、Et_2Me_2P塩ともにほぼ同じ形が得られた。また、緩和率の絶対値もほぼ同じであることが明らかになった。これは両者の電子構造がほぼ同じであることを示している。35K(Me_4P塩)、17K(Et_2Me_2P塩)で急激な吸収線幅の増大が観測された。この温度ではEPR測定でも異常が報告されている。しかし、両者の様子は大きく異なる。Me_4P塩では低温に向かって大きく線幅が増大し、同時に緩和率のピークが観測された。これは通常の反強磁性転移に期待される振舞いである。Me_4P塩ではダイマーに局在したモーメントが35Kで秩序化することを確認し、この系がモット絶縁体であることを証拠づけることが出来た。一方、Et_2Me_2P塩では異常のあった温度(17K)以下でも線幅の増大は緩やかである。緩和率は低温までほとんど一定値(Me_4P塩のそれとほぼ同じ値)を保っている。つまり、スピンのダイナミクスが低温まで残っている。このことよりEt_2Me_2P塩ではモーメントが局在しているのだが秩序化しきれずにいることが明らかになった。線幅の広がりは短距離秩序のためと考えればEPRの報告と矛盾しない。実際、Et_2Me_2P塩では重なり積分の異方性が小さいために、実効的な三角格子の葉になっており、局在スピンが磁気秩序しきれないと考えられる。 圧力下 Et_2Me_2P塩に7kbarの圧力を印可してNMRの測定を行った。この圧力は室温以下金属であり、50K付近で絶縁体に転移することがわかっている。この絶縁体相は超伝導相と接していると考えられる。金属状態では緩和率が温度に比例する、金属状態に特有の振舞いが観測された(Korringa則)。また、50Kで線幅の広がりと明瞭な緩和率のピークが観測された。線幅の広がりから秩序化したモーメントの大きさはMe_4P塩と比べてかなり小さいことがわかった。これらのことよりEt_2Me_2P塩の低温絶縁相はSpin Density Wave(SDW)相であろうと結論づけた。圧力により1次元性の強いLUMOバンドに電子が注入された為であると考えられる。
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