2000 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアとプラスチドでおこる脂肪酸合成の機能分担とその統御
Project/Area Number |
12025226
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 元 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (60167202)
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Keywords | 脂肪酸合成 / 脂肪酸合成酵素 / シロイヌナズナ / β-ketoacyl-ACP合成酵素 / ミトコンドリア / リポ酸 |
Research Abstract |
細胞内において重要な機能を担っている脂肪酸は、動物細胞では細胞質、植物細胞ではプラスチドでのみ合成されると考えられてきたが、最近になってアカパンカビ、牛の心筋細胞、酵母、エンドウの葉肉細胞のミトコンドリアにおいて、量的には少ないが脂肪酸の合成がおこることが発見された。しかし、ミトコンドリアに存在する脂肪酸合成酵素の実体や合成される脂肪酸の生理機能、ミトコンドリアとプラスチドまたは細胞質でおこる脂肪酸合成の機能分担については殆ど解明されていない。 本研究では、ミトコンドリアに存在する脂肪酸合成酵素の実体を明らかにするとともに、ミトコンドリアで合成される脂肪酸の生理機能の解析を行った。まず、シロイヌナズナからミトコンドリアに局在する脂肪酸合成酵素の1つのコンポーネントであるβ-ketoacyl-ACP合成酵素(mtKAS)をコードしているcDNAをクローニングし、その機能を解析した。シロイヌナズナのmtKAS cDNAを大腸菌のKAS変異株において発現させると、変異が相補されることから、このcDNAがKASをコードしていることが明らかとなった。また、mtKASのアミノ末端に存在するleader sequenceをGFPに融合させたタンパク質をソラマメの気孔孔辺細胞とタバコBY2で発現させると、ミトコンドリアにターゲットされた。このことは、mtKASがミトコンドリアに局在していることを示している。次に、mtKASのcDNAを用いて、ミトコンドリアにおける脂肪酸合成を抑制させたシロイヌナズナの形質転換植物の作製を試みた。mtKAS cDNAの全長をTiプラスミド(pBI121)のCaMV35Sプロモーターの下流にアンチセンス方向につなぎ、アグロバクテリウムを介してシロイヌナズナに導入した。現在までに多くの形質転換植物が得られており、今後はそれらの植物の中からミトコンドリアでの脂肪酸合成が抑制された形質転換体を選別し、それらの植物の表現型を野生株と比較することにより、ミトコンドリアで合成される脂肪酸の生理機能を明らかにする予定である。
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