2000 Fiscal Year Annual Research Report
高時間分解低温ナノ顕微鏡でキネシン1分子のステップの中を見る
Project/Area Number |
12030204
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
樋口 秀男 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90165093)
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Keywords | 1分子 / キネシン / 微小管 / ナノ計測 |
Research Abstract |
細胞内でキネシン・微小管系は細胞分裂や物質輸送に関与しているモータータンパク質である.キネシンの運動を研究する利点は他のモーター分子ミオシンやダイニンに比べて分子が小さく,組み替えキネシンの発現が容易かつ安定であることと,キネシン1分子でも長距離にわたり微小管上を滑ることである.これらの利点を生かして,我々はキネシンが"動く"ことを機能の指標にして,次のような3つの研究を進め,興味ある結果を得た.1.運動のメカニズムを解明する研究:キネシン頭部の表面にあるシステインを1つ残し他を別のアミノ酸に置換した組み替えキネシンのそのシステインに,ローダミンをラベルした.このキネシンを低ATP濃度下で微小管と反応させたところ,1秒程度の偏光強度のゆらぎが観察された.このゆらぎが運動に関係するのか現在検討中である.2.タンパク質の構造の安定性と機能の関係を理解する研究:キネシン分子を37度C以上の高温に長時間保温すると,キネシンは変性して微小管と相互作用をしなくなる.しかし,保温時間を短くすると,他の状態が観察された.それは,キネシンは微小管を滑らせることはできないが結合はできる状態と微小管の方向に1次元のブラウン運動を行う状態である.これらの結果は,キネシンが部分変性し運動機能の一部が失われたことを示唆する.3.細胞運動をキネシン・微小管系を用いて再現する試み:多数の天然あるいは組み替えキネシンをポリスチレンビーズに結合させ,これを微小管と混ぜるとキネシン・ビーズ・微小管複合体が細胞骨格のような構造を形作る.これにCaged-ATPを加え,紫外線を当てて運動を開始すると"細胞運動"をする.個の運動の基本は,並進運動と屈曲運動であると考えられる.この系にはビーズを入れてあるので光ピンセットを用いた力学計測も可能である.
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[Publications] H.Higuchi: "Processive movement of single 22S dynein molecules occurs only at low ATP concentrations."Proc.Natl.Acad.Sci.USA.. 97. 2533-2537 (2000)
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[Publications] H.Higuchi: "A mutant of the motor protein kinesin that moves in both directions on microtubules."Nature. 406. 913-916 (2000)
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[Publications] H.Higuchi: "Substeps within the 8mm step per ATPase cycles of single kinesin molecules"Nat.Cell Biol. (in press). (2001)