2001 Fiscal Year Annual Research Report
危機言語の記述とその動態論的研究-特に共通語との関係で
Project/Area Number |
12039214
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
梶 茂樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10134751)
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Keywords | 危機言語 / 言語接触 / 多言語使用 / アジア・アフリカ / 共通語 / 国語 / 部族語 |
Research Abstract |
言語の存在が危機的状況に陥る場合、そこでは必ず他の優勢な言語との二(あるいは多)言語併用状態を経ているとの認識から、アジア・アフリカ地域において、記述言語学的研究と社会言語学的研究の両面から現地調査を続け、危機言語問題について考察を行った。 具体的には、アフリカのタンザニアと南アフリカのカメルーン、そして東南アジアのインドネシアにおいて、それぞれの国における共通語と部族・地方語との係わりの比較・対照研究を行った。 タンザニアではスワヒリ語が国語として全国的に用いられているが、マリラ語、ルオ語、ベンデ語などの、まったくか、あるいはほとんどデータのない言語を記述しつつ、それらの言語の語彙、文法のいかなる面がスワヒリ語に犯されやすいかを、またカメルーンでは、西部のバムン語と地域共通語のピジン・イングリッシュとの関係、さらにはインドネシアではバリ語、スンバワ語などの記述をベースに、語彙、文法のいかなる面が国語であるインドネシア語に犯されているかを考察した。そこではたんに、優勢語から地方語へという方向性のみならず、逆に、地方語から優勢語へという影響も見られた。ただし、優勢語が地方語から影響を受けることによって、逆に優勢語に親しみやすいという状況が生まれることも起こりうることが確認された。
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[Publications] 梶 茂樹: "世界の声調・アクセント言語"音声研究. 5・1. 8-10 (2001)
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[Publications] 梶 茂樹: "バンツー諸語の声調-そのタイプ-"音声研究. 5・1. 37-45 (2001)
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[Publications] 原 真由子: "バリ語=インドネシア語コード切り替え-統語談話構造分析 その3"アジア・アフリカ文法研究. 30. 140-156 (2002)
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[Publications] 梶 茂樹(共著): "アフリカの都市的世界(現代都市とポピュラー・ミュージック)"世界思想社. 323 (2001)
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[Publications] 角谷征昭(共著): "言語学論集(マリラ語におけるスワヒリ語からの借用語)"渓水社. 479 (2002)