2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12042217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
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Keywords | 溶液 / 化学反応 / フェムト秒 / 近赤外 / S_n-S_1吸収 / エネルギー移動 / 分子運動 / 時間分解 |
Research Abstract |
研究代表者らは、平成12年度に科学研究費特定領域研究(A)(2)の交付を受けて、「溶液反応における超高速ダイナミクスの分光計測」に関する研究を行った。2年間の研究計画の第1年目相当する本年度の第一の目標は、既存の装置を改良して本研究の目的に即した分光計測装置を構築することであった。この方針に沿って、InGaAsリニア検出器(256素子)1個を購入し、フェムト秒時間分解近赤外分光システムで昨年度以来用いていたシングルチャンネルのInGaAs検出器と交換した。検出系がマルチチャンネル化されたことで、従来の1/10以下の短時間での効率的測定が可能となった。 本研究の遂行にあたっては、(i)ピコ秒・フェムト秒領域での反応分子同士の相対的並進・回転運動の実験的観測、(ii)溶質-溶媒相互作用による分子間エネルギー移動過程の観測とその機構の考察、(iii)溶液反応の定量的モデルの構築、の3点を目標としている。本年度は、このうちの(i)を解明するための分光計測と解析を主として行った。trans-スチルベンおよびビフェニルと四塩化炭素の超高速2分子反応に注目し、これらの反応の動力学をフェムト秒の時間分解測定を用いて明らかにした。さらに、その結果が、本来は希薄溶液における反応において成立する拡散律速反応のSmoluchowski理論やCollins-Kimball理論で説明されることを見出した。これは、1ピコ秒程度の時間が経過した段階での溶液中の分子の並進運動が拡散の概念で記述できることを示唆しており、拡散モデルの適用限界を実験的に示すことにつながる。これらの結果を論じた論文は、trans-スチルベンについての速報をすでに出版し(裏面に記載)、ビフェニルについての論文(2報)を投稿中である。また、本年度は、国際会議における招待講演を5件行った。
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Research Products
(1 results)