2000 Fiscal Year Annual Research Report
共役π電子系・タンパク質・液体中に非局在化した赤外・ラマン励起のダイナミクス
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12042219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥居 肇 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80242098)
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Keywords | 共役π電子系 / タンパク質 / 液体 / 分子振動 / 赤外・ラマン強度 / 光学的性質 / 電子・振動相互作用 |
Research Abstract |
液体・タンパク質・共役π電子系といった,多くの振動自由度をもつ分子系の振動ダイナミクスを,スペクトロスコピーの立場から論ずるためには,光との相互作用に関わる遷移強度の大きな振動モードの性質を知ることが重要である。これらの系の,振動遷移強度が大きいモードの多くに共通した性質として,空間的な非局在性を挙げることができる。振動遷移強度が大きいということは,言い換えれば双極子微分・分極率微分が大きいということであるが,振動モード及び電子波動関数が非局在であるが故に双極子微分・分極率微分が大きな値をとる場合と,逆に双極子微分が大きいために振動モードが非局在化する場合がある。いずれの場合にも,振動モードの非局在性と振動遷移強度の間には本質的な関係があるといえる。 このうち,液体・タンパク質など凝縮相中では,互いに近接した分子・ペプチド基の,振動遷移強度が大きい分子振動の間には,遷移双極子カップリング(TDC)のメカニズムに基づく相互作用が働いている。特に相互作用が共鳴的な場合,その分子振動は複数の分子・ペプチド基に非局在化する。このような振動励起の非局在性の影響が最も顕著に現れる現象としては,赤外・ラマンスペクトルのノンコインシデンス効果(NCE)が挙げられるが,その他の光学過程についても,どのような影響があるかを検討することは,凝縮相系の光学シグナルを正しく解釈するという観点から重要である。 本研究ではこのような考察に基づき,最近の赤外pump-probe測定において見出された,赤外励起異方性の超高速減衰とNCEの関係を理論的に解析した。その結果,大きなNCEが観測される場合には,赤外励起異方性の超高速減衰が起こることが期待できることがわかった。また,この因果関係には,TDCによる振動バンド拡がりが深く関わっていることも明らかにすることができた。
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[Publications] H.Torii: "Ultrafast anisotropy decay of coherent excitations and the noncoincidence effect for delocalized vibrational modes in liquids"Chem.Phys.Lett.. 323(5,6). 382-388 (2000)
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[Publications] H.Torii: "Vibrational modes and electronic structural changes generating infrared intensities in charged conjugated π-electron systems : A case study on the chrysene radical cation"Vib.Spectrosc.. 24(1). 3-14 (2000)
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[Publications] K.Furuya: "Vibrational spectra and structures of long-chain streptocyanine dyes : Effects of electron-vibration interactions and vibrational polarizabilities"J.Phys.Chem.A. 104(47). 11203-11211 (2000)