2000 Fiscal Year Annual Research Report
ボーズ・フェルミ統計に従う多原子系の量子統計力学的ダイナミクス計算の研究
Project/Area Number |
12042257
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
衣川 健一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50254446)
|
Keywords | 径路積分 / セントロイド / パラ水素 / ボーズ統計 / フェルミ統計 / 量子液体 |
Research Abstract |
量子多体系ダイナミクスの実用的な計算法を開発すること、またそれを用いて諸般の量子統計力学的な動的現象を分子論的に解明することは重要な課題である。Boltzmann統計の枠組みでは従来からの径路積分セントロイド分子動力学(CMD)法を用いれば、一定の熱力学条件下での多原子・分子系の実時間相関関数を近似的に計算できることはよく知られているが、本特定領域研究では、新たにCMD法をボーズおよびフェルミ統計に拡張することを試みている(ボーズ・フェルミ系CMD)。本年度は以下の2つの成果が出た。 (A)研究代表者が液体パラ水素に対して1998年に行った従来型のCMD(Boltzmann統計に基づくCMD)計算の結果が、この量子液体の集団励起(縦音響様励起)を半定量的に予言していたことが、CMDの1年後の1999年に欧州で行われた中性子非弾性散乱実験によって明らかとなったため、計算と実験のデータを同じスペクトル解析の手法を使って分析した。その結果、CMDの予測は大変よく、また古典極限の分子動力学計算では、実験およびCMDで観測されたような明確な集団モードは検出されなかった。これは、古典極限ではポテンシャルの非調和性のために密度揺らぎの過減衰が起こるためであるのに対し、実在系や量子計算では、分子が量子化されて量子準位間エネルギーに相当する振動が顕れるためであると考えられた。 (B)研究代表者と長尾、太田が1999年に示した、CMDのボーズ・フェルミ統計へのやや直感的な拡張を量子力学的演算子を使って再定式化した。そのフォーマリズムでは、置換の効果を記述する擬ポテンシャルを含む仮想的なBoltzmann系に対するCMD計算から得られる位置セントロイドの時間相関関数が、もとのボーズ系またはフェルミ系の位置演算子の量子力学的な実時間相関関数の近似になっていることを解析的に示された。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] K.Kinugawa,H.Nagao,and K.Ohta: "A senciclassical approach to the dynamics of many-body Bose-Fernic systems by the path integral centroid molecular dynamics"Journal of Chemical Physics. 114(4). 1454 (2001)
-
[Publications] F.J.Bermejo,K.Kinugawa et al.: "Quantum effects on liquid dynamics as evidenced by the presence of well-defired collective excitations in liquid para-hydrogen"Physical.Review Letters. 84(23). 5359 (2000)
-
[Publications] K.Kinugawa a,H.Nagao,and K.Ohta: "Path integral centroid molecular dynamics simulation extended to Bose and Fernic statistics : method and applications"Prog.Theor.Phys.Suppl.. 138. 531 (2000)
-
[Publications] Y.Shigeta,K.Kinugawa, et al.: "Quantum spin depnanics by means of a path integral spin centroid method"Prog.Theor.Phys.Suppl.. 138. 533 (2000)