2000 Fiscal Year Annual Research Report
計算科学に基づくヘテロ原子低次元長鎖状結合を有する化合物の設計・合成および物性
Project/Area Number |
12042259
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
中西 和郎 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80110807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 聡子 和歌山大学, システム工学部, 助手 (00294306)
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Keywords | 3c-6e / 4c-6e / 5c-6e / X線結晶構造解析 / 非結合相互作用 / 非経験的分子軌道計算 |
Research Abstract |
本研究の目的は、セレン原子の関与する非結合相互作用を介在させることにより、新規な結合様式、構造、反応性および機能を有する低次元長鎖状結合を構築することである。計算科学の手法を駆使して、標的化合物の設計・合成法・その特異な結合様式や物性を実験の開始に先がけて理論計算により検討することを試みている(愛称:計算先導)。既に8-G-1-(アリールセラニル)ナフタレンの系において、Se原子周辺の配座を3種類(type A,type B,type C)に大別して論議できることを提案している。今回アントラキノン(1,8-ビス(アリールセラニル)アントラキノン:1)及びアントラセンの系(1,8-ビス(アリールセラニル)アントラセン:2)に拡張して、C_1-Se-O-Se-C_1型の5原子直線状結合を有する化合物を設計・合成した。X線結晶構造解析の結果、1のそれぞれのArSe基は、type B配座をとり、C_1Se-O-Se-C_1の5原子は、ほぼ直線状に並列していることが分かった。この直線状結合は5中心6電子結合(5c-6e)として解析でき、低次元結合を有する化合物を構築できた。これに対して2の構造では、それぞれのArSe基がtype A配座をとることが確認された。このことから2におけるArSe基のtype A配座が、1では、type B配座に変換されたことを示している。この事実は、1における、C_1-Se-O-Se-C_1の5c-6eが1をさらに安定化させることに寄与をしているとして矛盾しない。またこのことは理論計算によっても実証している。その他の成果として、1,2-ビス(アリールセラニル)ベンゼンと2分子の臭素付加体においては、一方のSeBr_2構造が三方両錐構造(TB)であるのに対して他方のSeBr_2構造は分子錯体(MC)となることを実証し、有機カルコゲニド(R_2Z)の臭素付加体(R_2Z・Br_2)がTBとMCの平衡状態で存在することを実証した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Waro Nakanishi^* 他: "Inter-element Linkage in 1,2-and 1,4-Bis (arylselanyl) benzenes with Halogens"J.Organomet.Chem.. 611. 178-189 (2000)
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[Publications] Waro Nakanishi^* 他: "On the Equilibrium between MC and TB of Diaryl Selenide Dibromines in Solution"Heteroatom Chem.. (In press). (2001)