2000 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚にはたらく希少鍵物質:母川物質及び哺乳動物のフェロモンの同定
Project/Area Number |
12045257
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
栗原 堅三 青森大学, 環境科学研究科, 教授 (00016114)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏柳 誠 北海道大学, 薬学研究科, 助教授 (20169436)
森 哲哉 青森大学, 工学部, 助手 (60295954)
柏倉 正 青森大学, 工学部, 教授 (70115161)
庄司 隆行 北海道大学, 薬学研究科, 助手 (00241349)
|
Keywords | サケ / 母川回帰 / 母川物質 / フェロモン |
Research Abstract |
サケの母川回帰機構として嗅覚仮設が広く支持されている。しかし、サケが遡上するそれぞれの河川を特徴付ける匂い(母川物質)は明らかにされていない。母川物質は河川に残留している同種の魚から放出されるフェロモン(おそらく胆汁酸)であるという説が提唱されている。一般に、魚類の嗅覚器は水中のアミノ酸や胆汁酸をきわめて低い濃度から感知できる。そこでまず、種々のアミノ酸と胆汁酸、主要無機陽イオンに注目し、これらの定量分析(HPLC、ICP発光分光分析)を行なった。また、その結果にしたがって再構成した人工河川水に対して魚が自然河川水に対してと同様の応答を発現するかを調べた。実験河川として、洞爺湖流入河川(ソウベツ川、ポロモイ川、臨湖実験所飼育水)を選んだ。アミノ酸(L-体、関連物質を含む)分析の結果、調べた上記3河川すべてにおいて、Ser、Gly、尿素が多く含まれるなどの大まかな傾向については共通していたが、Tauはポロモイ川、臨湖実験所にのみ、ProやGlnはポロモイ川とソウベツ川にのみ含まれるなど、各河川ごとにアミノ酸の組み合わせと濃度は異なることがわかった。また、冬期間はほとんどのアミノ酸濃度が低下することから、河川水中のアミノ酸は河川および河川周辺の動植物由来であると考えられた。次に河川水中に含まれる胆汁酸の分析を行なった。その結果、ポロモイ川には7種(total5.11nM)、臨湖実験所飼育水には2種(total4.54nM)、ソウベツ川には1種(0.296nM)の胆汁酸が含まれていた。以上の分析結果に基づき人工河川水を調製し、サクラマス嗅覚器に与え嗅神経応答を測定した。その結果、アミノ酸で再構成した人工河川水を与えた場合のみ自然河川水の場合と同様の応答が観測された。この結果は、母川物質として働く匂い成分は胆汁酸ではなくアミノ酸である可能性が高いことを示している。
|