2000 Fiscal Year Annual Research Report
微視的理論に基づくスピン・電荷分離系の現象論の構築とその高温超伝導への応用
Project/Area Number |
12046207
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海老澤 丕道 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (90005439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 正彦 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 講師 (60301040)
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Keywords | 高温超伝導 / スピン・電荷分離 / t-Jモデル / 擬ギャップ |
Research Abstract |
本研究の目的は、スピン・電荷分離系における現象論の構築であるが、それに向けての第一段階として、本年度の研究では、特にスピン・電荷会離の顕著な高温超伝導体の超伝導臨界温度以上の異常金属相を記述する有効理論の、t-Jモデルに基づく構築を行った。高温超伝導体においては超伝導臨界温度以上にいわゆる「擬ギャップ」と呼ばれる、スピン励起にギャップ的な振る舞いが見えだす特徴的な温度が存在する。近年、異常金属相におけるさまざまな物理現象(たとえば電気伝導や熱伝導)はこの温度と非常に高い相関を持っていることが明らかになってきている。これらの現象に対するt-Jモデルに基づく理論的なアプローチとしてはこれまで平均場近似を用いたものしかなかったが、我々はt-Jモデルにおいて現れる、スピノンおよびホロンの秩序状態に対して、従来BCS理論の枠組みで広く用いられてきた「ゆらぎの理論」の考え方を適応し、秩序のゆらぎに基づき異常金属相を記述する理論を構築した。これに基づくと、2次元という低次元性と、スピンと電荷を結合させるゲージ場の効果により、スピノンおよびホロンの凝縮による個別の相転移が抑制された状況を記述できる。我々はさらに低温側でクーパー対の形成による超伝導相関が発達してくることも、超伝導の秩序変数を導入することによって記述可能であることを見いだした。これらの研究の成果は、具体的な物理量の評価に適応可能であり、ホール係数等の輸送係数やトンネル状態密度等の計算により、秩序のゆらぎという観点から異常金属相の物性を解析する基礎を与えると期待できる。
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Research Products
(1 results)