2001 Fiscal Year Annual Research Report
二次元三角格子層状構造デラフォサイト型遷移金属酸化物の合成と単結晶育成及び物性
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12046229
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 正 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20218457)
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Keywords | デラフォサイト型酸化物 / 遷移金属酸化物 / 電子構造 / 擬ギャップ / 電気伝導性酸化物 / 単結晶育成 / 2次元三角格子 / 層状構造 |
Research Abstract |
主な研究成果は以下のとおりである. 1.フローティング・ゾーン法を用いて育成したCuFeO_<2+δ>単結晶を用いて反強磁性状態に及ぼす酸素不定比性の効果を調べた.その結果,新たなメタ磁性転移が現れることと高磁場での各反強磁性状態が安定化されることが明らかとなった.さらに,メタ磁性転移の異方性を明らかにした. 2.PdCoO_2の電子構造を光電子分光と逆光電子分光によって調べた・その結果,フェルミレベルでの状態密度は存在するが,擬ギャップ的になっていることが明らかになった. 3.PdCoO_2の熱電能の温度依存性を調べた結果,符号は正でキャリアーがホールであることが示唆された・絶対値は小さく通常の単純金属とほぼ同様であった.これはPdCoO_2のフェルミレベルでの状態密度が上記の擬ギャップ的な落ち込みのちょうど底にあるためと考えられる. 4.PdCoO_2の結晶構造の詳細を単結晶4軸X線回折測定とマキシマム・エントロピー解析法で調べた.その結果,CoO_6八面体がc軸方向に非常に密になっていることが明らかとなった.また,PdとO間の結合が非常に強く,共有結合的な状態にあることが明らかとなった.直線二配位の結合関係にあるPdとO間のこの強力な結合状態が上記のCoO_6八面体がc軸方向に密な状態になっている要因であると解釈された.さらに,この強力な結合状態がPdCoO_2の金属電気伝導性に密接に関係するPdとOの軌道の混成を起こさせていると解釈された. 5.高圧下での格子定数の変化を調べた結果,格子定数の比c/aが圧力の増加とともに増加することが明らかとなった.さらに,電気抵抗の温度依存性の圧力効果はほとんどないことが明らかとなった.これらの結果はPdCoO_2の層状構造という結晶構造からは期待されない特異な結果であるが,上記の4の結果であるPdとO間の強力な結合状態及びこれに付随するCoO_6八面体のc軸方向の密な状態によると解釈された.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Hasegawa: "Effects of oxygen non-stoichiometry on anisotropic magnetism of triangular lattice antiferromagnet CuFeO_<2+δ> single crystals"Phys.Rev.B. 63. 184437-184443 (2001)
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[Publications] M.Hasegawa: "Metathetical reaction growth and characterization of delafossite-type Pd(Co, Mg)O_2 single crystals"J.Crystal Growth. 226. 277-280 (2001)
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[Publications] M.Hasegawa: "Electronic structure of delafossite-type metallic oxide PdCoO_2"Mater.Trans.. 42. 101-104 (2001)
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[Publications] 長谷川 正: "デラフォサイト型電気伝導性酸化物PdCoO_2の電気抵抗の圧力依存性"高圧力の科学と技術. 11・特別号. 213 (2001)
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[Publications] 長谷川 正: "デラフォサイト型酸化物PdCoO_2の電子構造と熱電能"人工結晶討論会講演要旨集. 46. 109-110 (2001)
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[Publications] M.Hasegawa: "Thermoelectric Power of Delafossite-Type Metallic Oxide PdCoO_2"Solid State Commun.. 121. 203-205 (2002)