2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12046240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (80181600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢口 宏 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30314173)
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Keywords | パイロクロア酸化物 / 幾何学的フラストレーション / スピンアイス / カゴメアイス / モット絶縁体 / 金属・絶縁体転移 |
Research Abstract |
パイロクロア遷移金属酸化物A_2B_2O_7における幾何学的フラストレーションに基づく現象、特に残留エントロピーの問題や量子スピン物性を明らかにし、新たな物理現象を探索することを目的に研究を行った。本年度は主に以下の成果を納めた。 (1)Aサイトにイジング磁気異方性を持つDyを用いて、結晶構造のパイロクロア格子に.由来する幾何学的フラストレーションに基づく低温物性を詳しく研究した。Dy_2Ti_2O_7およびHo_2Ti_2O_7良質単結晶を育成し、磁化の温度・磁場依存性の測定から、磁気異方性を初めて定量的に明らかにした。また磁場中比熱の測定から、ゼロ磁場でのいわゆるスピンアイスの残留エントロピーを単結晶で観測した。さらに<111>結晶軸方向に印加した磁場の下では、新たな磁気フラストレーション状態が生まれることを発見し、それが、カゴメ格子上のスピンのグラスとレーションによることを明らかにした(カゴメアイス)。 (2)Bサイトに5d遷移金属イリジウムを含む一連のパイロクロア酸化物の合成に成功し、希土類元素のイオン半径に応じて系統的に金属・絶縁体転移が起こることを明らかにした。このことはイリジウム電子の電子相関がこれらの化合物の基本的電子物性に決定的な役割を果たし、モット絶縁相を安定化させることを意味する。また、元素置換によりキャリアドーピングを行うことで、モット絶縁体パイロクロア酸化物を金属化することにも成功した。 (3)Bサイトに4d遷移金属ニオブを含む一連のパイロクロア酸化物の合成に成功した。それらは4価のニオブイオンから予想されることに反して、スピン1/2に基づく磁性を示さないことが明らかになった。この原因として規則的な格子歪みを伴うスピンダイマーの形成あるいは、量子スピン液体状態の形成などが考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H.Fukazawa: "Magnetic Ground State of the Pyrochlore Oxide Y_2Nb_2O_7"Physical Review B. 67. 054410-1-054410-5 (2003)
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[Publications] H.Yaguchi: "Detailed Study of the ac Susceptibility of Sr_2RuO_4 in Oriented Magnetic Fields"Physical Review B. 66. 214514-1-214514-7 (2002)
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[Publications] K.Deguchi: "Superconducting Double Transition and the Upper Critical Field Limit of Sr_2RuO_4 in Parallel Magnetic Fields"Journal of the Physical Society of Japan. 71. 2839-2842 (2002)
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[Publications] H.Fukazawa: "Filling Control of the Pyrochlore Oxide Y_2Ir_2O_7"Journal of the Physical Society of Japan. 71. 2578-2579 (2002)
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[Publications] R.Higashinaka: "Specific Heat of Dy_2Ti_2O_7 in Magnetic Fields : Comparison Between Single-Crystalline and Polycrystalline Data"Journal of Physics and Chemistry of Solids. 63. 1043-1046 (2002)
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[Publications] N.Kikugawa: "Non-Fermi-Liquid Behavior in Sr_2RuO_4 with Nonmagnetic Impurities"Physical Review Letter. 89. 117001-1-117001-4 (2002)
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[Publications] A.Mackenzie: "Novel Quantum Order in the Ruthenates"Physics World. 15. 33-38 (2002)