2000 Fiscal Year Annual Research Report
小さなスピンギャップに対する磁場効果のNMRによる研究
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12046256
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 助教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄男 上智大学, 理工学部, 助手 (40327862)
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Keywords | NMR / 低次元量子スピン系 / 高温超伝導体 / スピンギャップ |
Research Abstract |
本研究の目的は小さなスピンギャップを持つ系を合成し、強磁場によってギャップを潰した状態で、低温において新しい電子状態が出現するかどうかをNMRのナイトシフト及び縦緩和率によって調べることである。本年度はタリウム系高温超伝導体および低次元量子スピンラダー磁性体について研究を行い、以下の成果を得た。 1)タリウム系高温超伝導体TlBa_2(Ca_xY_<1-x>)Cu_2O_7 この系は反強磁性相(x=0)からわずかに過剰ドープとなる領域(x=1)まで広い範囲まで合成可能であるため、全領域をシステマティックに調べることができた。その結果、ライトドープ域における常伝導状態で、緩和率にはスピンギャップが出現するが、ナイトシフトの温度依存性は完全に平坦でスピンギャップが全く現れないという異常な結果が得られた。これは他系ではこれまで全く見られなかった現象であり、次年度は本申請の主題である磁場効果、すなわち、この緩和率だけに見られたスピンギャップが強磁場で潰れるかどうかを調べて行きたい。 2)低次元量子スピン系NH_4CuCl_3 この系は、磁性を担うCu-3dスピンの結合角がほぼ90度であるため交換相互作用が十数Kと小さく、実験室で発生可能な磁場でスピンギャップを潰すことが出来る。さらに、ゼロ磁場での基底状態が二足梯子でありながら磁気的であることや、磁場印加過程で磁化にプラトーが現れるなどの異常が報告されており、その原因の解明が待たれている。本年度は、単結晶試料を用いた強磁場NMRによって、スペクトルの同定を行い、それぞれ内部磁場が異なる非磁性シングレットサイトと、励起トリプレットサイトが存在すること、及び、低エネルギースピン励起は磁化がプラトーを示す領域では熱活性型であるが、ギャップが閉じたスロープ領域では温度によらず一定値となる成分と熱活性型の成分が共存していることを明らかにした。次年度はこの共存の原因を調べるとともに、トリプレットサイトの配置(スピン構造)を明らかにして行きたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Fukase,T.Shinode,Y.Oshima T.Sujuki,K.Chiba,T.Goto,K.Yamaole: "Elastic anomalies induced by spin-flop in La_<1.88> Sr_<0.12> CuO_4"Physica B284-288. B284. 483-484 (2000)
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[Publications] S.Endo,T.goto,H,Uozaki N,T.Fukase,K.Ueda,Tsuzimoto,Toyota: "^1H-NMR of an organic p-d metal k-(BEDT-TSF)_2FeCl_4"Physica. B281. 682-683 (2000)