2001 Fiscal Year Annual Research Report
液体シンチレータを使った低エネルギー太陽ニュートリノスペクトルの測定
Project/Area Number |
12047202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 邦雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10242166)
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Keywords | 太陽ニュートリノ / ガドリニウム / 液体シンチレーター |
Research Abstract |
スーパーカミオカンデやSNOといった最新の観測は、ニュートリノ振動の大混合角解を支持しており、カムランド実験での原子炉ニュ-トリノ観測が、それを精度よく検証すると期待されている。その結果をさらに確実にするには、低エネルギー太陽ニュートリノスペクトルを実時間で観測し、なおかつニュートリノフレーバーを特定する必要がある。観測が始まるカムランドやBOREXINOが中性カレントも含めた測定となるため、低エネルギー太陽ニュートリノを荷電カレント反応のみで実時間測定する実験が必要となる。^<160>Gdは、PPニュートリノをも観測できる低い閾値で、さらにバックグラウンドに強い三重同時計測が可能なため、この目的に最適である。本研究では、三重同時計測に不可欠な高速性を持つ液体シンチレータにガドリニウムを溶かし込むことに開発を絞り、低エネルギーニュートリノ検出器の開発を行った。広範な溶媒やガドリニウム化合物の探索により、PseudoCumene60%と界面活性剤(NS210)40%を混合した溶媒と硝酸ガドリニウムGd(NO_3)_36H_2Oの組み合わせで、ガドリニウム重量比8%が可能なことを発見した。5wt%でのシンチレータとしての性能は、時定数2nsec以下、発光量3500photon/MeV、透過率90cm@430nm以上、α線クエンチ7.4@7.8MeV、α線弁別95%以上と十分な性能を有することがわかった。1m^3サイズの検出器をシミュレーションした場合、^7Beニュートリノに対する三重同時計測の効率65%、PPニュ-トリノでは問題となる^<152>Gdの崩壊を2シグナルとして見間違う確率0.05%以下とする条件でも63%の効率が得られることが分かった。この液体シンチレータは競合する他国の開発と比べても10分の1程度のコストなため、非常に競争力のあるガドリニウム含有液体シンチレータの開発に成功したといえる。
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