Research Abstract |
微小脳を神経解剖学的に研究する方法として,光顕レベルでは,ボーディアン染色法,ゴルジ染色法,準超薄切片法などがあるが,それぞれ一長一短がある.今回,準超薄切片法と画像処理を組み合わせることで,従来は単染色しか使えなかった準超薄切片法で,二重染色と同様のカラー画像を得ることができるようになった.この方法を使えば,脳内の細胞体,グリア,トラクト,ニューロパイルの識別が容易なうえ,ニューロパイル内のさらに微細な構造などを,色調を手がかりに解析することができる. この方法を使って,トンボ,カイコガ,ホタル,ハエなど,種々の昆虫の脳の連続切片を観察し,キノコ体と中心複合体の概形および内部構造を比較した. さらに同じ方法を使って,セイヨウミッバチの働きバチの脳を,羽化直後,内勤バチ,外勤バチの3つのステージで定性的に比較し,以下の結果を得た.ニューロパイル間や皮質-ニューロパイル間を境界するグリアの層は,羽化直後では未発達であった.キノコ体の柄と葉にみられる層状のモジュール構造(ゴキブリのスラブに相当)は,羽化直後では,内勤バチ,外勤バチと比べて不明瞭であった.層状構造に直交する方向に明暗の帯域が,内勤バチでしばしば観察され,羽化直後と外勤バチではほとんど見られなかった.帯域のパターンは,個体差が大きく,左右差もあった.
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