2000 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansのamphid感覚情報処理機構の分子生物学的解析
Project/Area Number |
12048225
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
桂 勲 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00107690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 健 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (10249948)
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Keywords | 行動 / 遺伝子発現 / 線虫C.elegans / 走化性 / 順応 / 連合学習 / 変異体 / dauer幼虫 |
Research Abstract |
本研究は、当研究室で分離した線虫C.elegansの変異体を用い、主として分子生物学的手法により、感覚器官amphidで受容される感覚信号の処理機構(学習を含む)を解明することを目的とする。本年度は、以下の結果を得た。(a)sdf-9変異体は、daf-7遺伝子(dauer幼虫形成を阻害するTGF-β)のプロモーターを多数導入すると、ほとんど全ての虫がいったんはdauer幼虫になるが、まもなくdauer幼虫から復帰する。この遺伝子は、Tyrホスファターゼホモログをコードする。(b)sdf-13(転写因子Tbx2ホモログ)変異体は、AWC神経で感じる全ての匂い物質への順応に異常を示すが、AWC,AWB,ASJ感覚神経と多数の咽頭の神経で発現する。また、このうちAWC,AWB,I1という3種の神経での発現で、順応には十分である。(c)匂い物質への走化性よりも銅イオンの忌避を優先するut236変異の原因遺伝子は、LDLaドメインをもつ分泌蛋白質をコードし、連合学習にも関係する。この遺伝子は、AIY介在神経およびASE感覚神経で発現する。過剰発現の場合は、AIYのみ、ASEのみ、あるいは胴体の触覚神経での発現でも機能に十分だが、筋肉での発現では機能しない。(d)多重変異体の表現型と経路・カスケードとの関係を従来の直列経路の他に並列経路まで拡張して扱うブール代数理論を整備した。これを用い、匂い物質への走化性と銅イオンの忌避との選択において、上記のut236変異の遺伝子と飢餓の効果が見られないut235変異の遺伝子とが並列に働くことを示した。(e)線虫において従来、嗅覚による連合学習と呼ばれてきたものが、餌が順応を阻害することで説明できることを示した。この結果を用いて、新しい学習変異体を分離し、学習の機構を解明する道を開いた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Aoki. et al..: "Characterization of Ce-atl-1, an ATM-like gene from Caenorhabditis elegans."Mol.Gen.Genet.. 264. 119-126 (2000)
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[Publications] Asahina et al.: "The conserved nuclear receptor Ftz-F1 is required for embryogenesis, moulting and reproduction in Caenorhabditis elegans"Genes to Cells. 5. 711-723 (2000)
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[Publications] Okuda et al.: "Identification and characterization of the high-affinity choline transporter"Nature Neurosci. 3. 120-125 (2000)
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[Publications] Shioi et al.: "Mutations affecting nerve attachment of Caenorhabditis elegans"Genetics. (印刷中). (2001)