2001 Fiscal Year Annual Research Report
神経終末活動の可視化によるシナプス可塑性メカニズムの解明
Project/Area Number |
12050210
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
神谷 温之 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10194979)
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Keywords | シナプス伝達 / カルシウムイオン / 可塑性 / 海馬 / 長期増強 |
Research Abstract |
海馬CA3野苔状線維シナプスにおける長期増強(Long-term potentiation; LTP)は、シナプス後細胞でのNMDA受容体活性化を必要とせず、シナプス前部でのアデニル酸シクラーゼ活性化により苔状線維終末内のサイクリックAMP濃度が上昇し、サイクリックAMP依存性リン酸化酵素による何らかの基質タンパクのリン酸化により伝達物質放出量の持続的増加を引き起こすとの仮説が想定されている。本研究では、苔状線維シナプスにおけるシナプス前性LTPにおいて伝達物質放出に関わるどの素過程が修飾されるかを調べる目的で、シナプス前部へのカルシウム流入および微小EPSC(興奮性シナプス後電流)に対する高頻度刺激の効果を検討した。マウス海馬スライス標本において入力線維層に局所的に注入した細胞膜透過型蛍光カルシウム指示薬(rhod2-AM)が軸索内に取り込まれシナプス前終末まで輸送される。このような標本で蛍光強度を指標にシナプス前終末内カルシウム濃度変化を測定し、同時に興奮性シナプス後電位(EPSP)も記録した。苔状線維に高頻度刺激(100Hz 1秒)を与えるとEPSP振幅は持続的に増大しLTPが誘発されたが、同時に記録したシナプス前部へのカルシウム流入は変化しなかった。また、微小EPSCの平均頻度は約2倍に増加したが、平均振幅には変化がみられなかった。これらの結果から、苔状線維シナプスにおけるLTPの発現に伴いシナプス前終末へのカルシウム流入量は変化せず、カルシウム流入以降の開口放出機構の促進が関与すると考えられた。また、これらの研究を進める中で、海馬CA3野苔状線維シナプスにおいて100ミリ秒以内に繰り返し刺激を与えるとシナプス前終末へのカルシウム流入量が一過性に増加するという新たな可塑性メカニズムを見出し、現在その機序について解析を進めている。
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[Publications] Kamiya, H: "Kainate receptor-dependent resynaptic modulation and plasticity"Neuroscience Research. 42巻・1号. 1-6 (2002)
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[Publications] 神谷 温之: "海馬シナプス伝達可塑性の分子機構"遺伝子医学. 5巻・3号. 499-501 (2001)