2000 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞機能阻害遺伝子の部位特異的強制発現による昆虫脳の行動制御メカニズムの解析
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12050237
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
伊藤 啓 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (00311192)
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Keywords | キイロショウジョウバエ / 神経回路網 / 脳 / エンハンサートラップ / 発生 / 触角葉 / 三次元再構成 / GFP |
Research Abstract |
昆虫の走光性行動は、明るさを好むという単純な走性ではなく、光源の方向を認識してそれに対して進路を定位する、高度な制御行動である。視覚情報は、複眼にある網膜にアレイ状に並んだ光受容細胞群で明暗の分布情報として検出され、脳側部の視葉に送られる。この領域には網膜での受容素子の配置に対応したコラム状の線維と、それに直交する層状の線維とが組み合わさった繰り返し構造が存在し、受容素子ごとの光強度の情報から、輪郭や動きなど基礎的な特徴情報を抽出する機能を担っている。これら低次視覚領野の回路構造は、哺乳類と昆虫で類似性が高く、これまでかなり詳しく解析されてきた。しかしここから脳のどの高次領野に、どのような情報が出力として受け渡されているのかについては、不明な点が多く、物体の総合的な形状認識や方向の定位など、より高次の視覚情報処理過程を解析する上で、大きな障害になっている。そこで本研究では、4500系統を超える我々の世界最大規模のGAL4エンハンサートラップ系統コレクションからこれまで約3000系統をスクリーニングし、低次領野である視覚葉から脳中枢の視結節・前大脳腹側部・側角・後傾斜の4つの高次領野へ投射する投射神経をラベルする系統を探索した。これによって従来知られていた10経路を大幅に上回る、30種の経路を同定した。共焦点レーザー顕微鏡による断層撮影像を三次元立体再構成処理して解析した結果、視葉第2層の視髄から出る線維と、第3層の視小葉から出る線維では、視葉内の細胞突起の形態に大きな特徴差があることが分かった。現在、各線維群を構成する細胞数や出力シナプスの分布状況、投射している領野ごとの線維終末形態の差など、さらに詳細な解析を進めている。
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