2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12051224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
真貝 洋一 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (20211972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 秀一 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (20261133)
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Keywords | ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / 抗原レセプター / 対立形質排除 / エンハンサー / RAG1 / RAG2 |
Research Abstract |
T細胞及びB細胞の抗原レセプターの対立形質排除の機構を明らかにする目的で、以下の3つの研究を行った。 1.TCRβ鎖エンハンサーをα鎖エンハンサーに置き換えたマウスの解析 TCRβ鎖には対立形質排除があるのに対してα鎖にはそれがないこと、それぞれの遺伝子のV(D)J組み換えにはそれぞれのエンハンサー(E)が重要な役割を果たすこと、対立形質排除はV-DJ組み換えの段階で制御されていることから、EβがTCRβ鎖の対立形質排除の鍵を握っている可能性が考えられた。そこで、TCRβ鎖エンハンサーをα鎖エンハンサーに置き換えたマウスを作製し、TCRβ鎖対立形質排除、β鎖遺伝子のVDJ組み換え、T細胞の初期分化に対する影響を調べた。その結果、このマウスではDNステージに於けるβ鎖遺伝子の再構成が強く阻害されること、その阻害はD-J組み換えにあること、そのために胸腺内T細胞の数が減少していること(週齢が進むにつれこの影響はなくなる)が判明した。しかし、いったんVDJβ組み換えがin frameで起こると、DNにおいても通常量のβ鎖が発現され、その細胞はβ選択によってDPまで分化し、正常な成熟・分化を行う。残念ながら、EβをEαに置き換えても、TCRβ鎖対立形質排除は破綻しておらず、2種類のTCRβ鎖を持つT細胞はコントロールマウス以上に観察されなかった。 2.TCRβ鎖遺伝子のDβ1の5'上流から最も近傍のVβまでを欠損させたノックアウトマウスの解析 残念ながら、このノックアウトマウスでもTCRβ鎖対立形質排除は破綻していないことが判明した。しかし、興味あることに、このマウスでは通常とは異なるVβの組み換え使用頻度(特にD-Jの近傍のVβほど頻繁に使われる傾向がある)を示すことが観察された。今後、TCRβ鎖遺伝子領域におけるVDJリコンビネースに対するaccessibilityとクロマチンの構造変化を正常マウスの場合と比較して検討してみたい。 3.機能低下のないRAG1と燐酸化による分解を受けないRAG2を発現するトランスジェニックマウスの作製 ubiquitousに発現するCAGプロモーターとT細胞特異的に発現させるlckプロモーターの制御下にRAG1,RAG2トランスジェニックマウスを作製した。いずれのコンストラクトも、細胞株に導入したときには遺伝子及び蛋白質の発現を確認したが、トランスジェニックマウスではその発現がいずれのラインでも観察されなかった。現在、なぜ遺伝子発現がトランスジェニックマウスでなされなかったのか、原因を検討中である。
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