2000 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原細菌のタイプIII分泌装置による発病因子及びエリシターの選択的分泌機構の解明
Project/Area Number |
12052211
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
天野 豊己 静岡大学, 理学部, 助手 (90297945)
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Keywords | TypeIII / Cryptogein / FOA / Site-directed Muta genesis / Phyto phthova cryptogea |
Research Abstract |
1.細胞死活性の定量的測定方法 細胞の生存率の測定に用いられる試薬に、フルオロセインジアセテート(FDA)が知られている。本研究ではFDAがフルオロセインに変換される速度を生存率と定義し、その定量性の検討を行った。 FDA溶液に生存率既知のタバコBY-2培養細胞を添加し、FDAの分解速度を測定したところ、これら2つのパラメーターの間に相関係数が0.998の1次相関が観察された。BY-2の生存率は、2回凍結融解を繰り返して生成した死細胞と生細胞を任意の割合で混合することで作成した。 2.過敏感反応死への応用 タバコ細胞に非常に強い細胞死を誘発することが知られているクリプトゲインを用いて、過敏感反応死の過程を検討した。クリプトゲインはPhythophthora cryptogeaが分泌する10kDaの単量体タンパク質である。クリプトゲインを添加したBY-2細胞の生存率は指数関数的に減少し、その半減期は500nMクリプトゲインの場合は2.5時間であった。また、クリプトゲイン濃度と添加直後から1時間後までの生存率の低下速度の相関は、ミカエリス・メンテンの式でフィットすることが可能であった。この時のkm値は130nMで、Vmax値は35%death/hrであった。また、クリプトゲインのN93A変異体を作成し同様の解析を行ったところ、km値は250nMで、Vmax値は33%death/hrであった。この結果N93A変異体は、細胞死の速度は野生型と同じであるがkm値が低下したことより、細胞への親和性が低下した変異体であることが示唆された。 3.タイプIII複合体への応用 タイプIII分泌複合体の発現系は、Pseudomonas syringae pv.syringae由来のHrpクラスタがクローニングされているコスミドのpHIR11を大腸菌DH5α株に導入したものを用いた。pHIR11を導入した大腸菌をタバコの葉に接種した場合、壊死斑の形成が報告されている。本研究では、約7x10^8個の大腸菌をMS培地中に懸濁されている1x10^7個のタバコ培養細胞に添加し、42時間後に細胞の生存率を測定したところ、pHIR11の有無で生存率に有意な差が検出されなかった。また、細胞死よりも初期の反応にあたる細胞外液のアルカリ化に関しても同様の実験を行ったところ、有意な差が検出されなかった。
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