2000 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いたカルモデュリンキナーゼIVの神経可塑性における機能解析
Project/Area Number |
12053202
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
齋野 幸子 山形大学, 医学部, 講師 (50312559)
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Keywords | CaMキナーゼIV / ノックアウトマウス / 小脳顆粒細胞 / CaMキナーゼキナーゼ |
Research Abstract |
自ら作製したCa/カルモデユリン依存性プロテインキナーゼIV型(CaMキナーゼIV)遺伝子ノックアウトマウスの体重と肉眼的形態・行動が、成熟期に至る個体発生過程の各期に於いて野生型と較べて有意差を示さないことを確認の後、自ら作製した抗CaMキナーゼIV抗体を用いて型の如く免疫組織化学的検索を施行して、野生型において最も強い発現を示す小脳顆粒細胞においてこの酵素の発現が欠損していることを確認できた。また、小脳顆粒細胞と密接なシナプス関係を持つプルキニエ細胞に特異的な自ら作製したspot 35/calbindin抗体を用いて同ニューロンの組織学的配置、大きさ、樹状突起の分枝状態を免疫細胞化学的に観察したが、野生型のに較べて有意な相違は無かった。小脳顆粒細胞層の厚さ、構成細胞数、細胞死の有無をも組織切片上での計測とTunnel法により精査したが、いずれも野生型に較べて有意差は無かった。CaMキナーゼIVは野生型マウスにおいて小脳と同様に精巣にも強く発現することから、成熟期精巣を電顕用エポン包埋の厚切り切片のtoluidine染色処理により顕微鏡観察したが、精子形成過程の異常を示唆する組織学的所見は認められなかった。同様の強い発現を示す胸腺について成熟期でフローサイトメトリー法による解析をしたが、リンパ球の分化パターンには野生型のに較べて何ら相違が見出せなかった。さらに海馬切片を用いた長期増強LTPの有無を電気生理学的に検索(群馬大学小澤教授と神谷講師の協力を得る)したが、LTPの発現は認められなかった。以上の結果から、CaMキナーゼIVの遺伝子欠損により、CaMキナーゼファミリーの他の分子による強力な代償が起きていることが強く示唆されるので、その代償分子の同定とその機構を今後追及する必要が生じた。併せて、野生型マウス脳においてCaMキナーゼIVの上流のCaMキナーゼキナーゼの2つのアイソフォームの脳内組織・細胞レベルでの発現局在を免疫組織化学的に精査した。基質であるCaMKIVが細胞核に局在するのにこの酵素分子のいづれのアイソフォームも細胞質に局在していたので、CaMKIVのリン酸化の場の特定が新たな問題となった。
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[Publications] Saino S,Sakagami H,Kondo H.: "Localization of mRNAs for phospholipase D (PLD) type 1 and 2 in the brain of developing and mature rat."Developmental Brain Research. 120. 41-47 (2000)
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[Publications] Kudo M,Saino S,Owada Y,Suzaki H,Kondo H.: "Localization of mRNA for SHIP2, SH2 domain-containing inositol poly phosphate 5-phosphatase, in the brain of developing and mature rats."Molecular Brain Research. 75. 172-177 (2000)