2000 Fiscal Year Annual Research Report
生体内物質によるシナプス可塑性および記憶学習行動の調節機構
Project/Area Number |
12053213
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松木 則夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (70126168)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池谷 裕二 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (10302613)
西山 信好 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (20201692)
|
Keywords | 長期増強 / 長期抑圧 / 迷路学習 / 神経栄養因子 / 海馬 |
Research Abstract |
本研究は記憶・学習障害改善薬開発研究の一環として、生体内に存在する生理活性物質によるシナプス可塑性および記憶・学習の調節機構解明を目的とした。その中で肝細胞増殖因子(HGF)が理想的な作用をもつことを明らかにした。培養海馬神経細胞においてHGFの受容体であるc-Metが発現していることを免疫組織化学的に確認した後、パッチクランプ法によりグルタミン酸誘発電流に対する効果を検討した。HGFはNMDA誘発電流を用量依存的に増大させたが、AMPA誘発電流には影響しなかった。この作用は可逆的であった。NMDA型受容体を介する反応の選択的な増強は細胞内Ca2+濃度の上昇を指標にしても確認できた。しかし、細胞への傷害作用を指標にした場合には、HGFはNMDAの毒性に全く影響しなかった。 次いで海馬スライス標本を用いて電気生理学的な検討を行った。まず、海馬スライスにおいてもc-Metが錐体細胞や樹状突起などに強く発現していることを見出した。HGFはMg^<2+>非存在下で観察されるNMDA型受容体を介する誘発電位を増強したが、AMPA型受容体を介する通常の誘発電位には影響しなかった。さらに、テタヌス時にHGFを適用すると長期増強(LTP)を増大させた。しかし、低頻度刺激により誘発される長期抑圧(LTD)には影響しなかった。 学習課題遂行能力に対する作用を検討した。HGFを試行前に脳室内投与することにより、水迷路学習における潜時が著明に短縮した。HGFを投与した動物はY字型岐路交替学習においても優れた能力を示した。このような空間学習能力の向上は正常動物でも観察され、今まで明らかにされているさまざまな神経栄養因子と比べて、非常に強い作用であった。 このようにHGFの作用機序を明らかにすることにより、理想的な記憶・学習障害改善薬の開発が可能になったと考える。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Y.Nakagami: "Laminin degradation by plasmin regulates long-term potentiation."J.Neurosci.. 20. 2003-2010 (2000)
-
[Publications] N.Itokazu: "Bidirectional actions of docosahexaenoic acid on hippocampal neurotransmission in vivo."Brain Res.. 862. 211-216 (2000)
-
[Publications] Y.Ikegaya: "Distance of target search of isolated rat hippocampal neuron is about 150 μm."Neuroscience. 97. 215-217 (2000)
-
[Publications] S.Fujita: "Ca^<2+>- independent phospholipase A_2 inhibitor impairs spatial memory of mice."Jpn.J.Pharmacol.. 83. 277-278 (2000)
-
[Publications] K.Sato: "Extracellular ATP reduces optically monitored electrical signals in hippocampal slices through metabolism to adenosine."Eur.J.Pharmacol.. 399. 123-129 (2000)
-
[Publications] Y.Ikegaya: "L-type Ca^<2+> channel blocker inhibits mossy fiber sprouting and cognitive deficits following pilocarpine seizures in immature mice."Neuroscience. 98. 647-659 (2000)