2003 Fiscal Year Annual Research Report
近接場振動スペクトロスコピーの開発と光ナノ加工技術への応用
Project/Area Number |
12131208
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 康志 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (60294047)
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Keywords | 近接場振動分光 / 近接場光学 / ラマン分光 / 電場増強 / DNA / カーボンナノチューブ / 密度汎関数法 / ナノテクノロジー |
Research Abstract |
動脈硬化の原因となるオレイン酸コレステリルを分解・除去する方法として、赤外自由電子レーザー(FEL)を用いたレーザー治療法が提案されている。これにより分子構造変化が誘起される領域を特定することは臨床応用上重要であるが、ミクロ領域における分子構造変化を報告した例はない。そこで、試作した赤外近接場顕微分光装置を用いて、オレイン酸コレステリルを赤外自由電子レーザーによりオレイン酸とコレステロールに分解した領域の近接場観察を試みた。具体的には、赤外顕微鏡を用いて赤外自由電子レーザーのパルス光(λ=5.75μm、5μJ(試料面上))をオレイン酸コレステリルフィルム(膜厚2μm)に照射し、照射領域を差周波発生(DFG)による赤外パルス光(λ=5.75μm、0.1nJ(試料面上))と開口径2μmのカンチレバーを用いた近接場赤外顕微鏡で観察した。非照射領域はエステル結合による赤外光の吸収が観察される一方、照射領域は吸収量が少ないことを示し、この結果からFEL光照射領域内ではエステル結合が切断され、オレイン酸コレステリルが分解していることを回折限界以下の空間分解能で確認することができた。また非照射領域との吸収光量を比較することでFEL光照射領域の表面下1μmまで分子構造変化が起こっていることを確かめた。 また、チップ増強ラマン散乱分光に非線形光学効果を取り入れることで、近接場フォトンの閉じ込め効果を高め、空間分解能の向上を図った。具体的にはアンチストークスラマン散乱を金属チップ先端によりナノスケールで誘起した。DNAネットワーク構造を観察した結果、15nmの空間分解能を達成することができた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.Masaki: "Near-field infrared imaging of molecular changes in cholesteryl oleate by free electron laser infrared ablation"J.Appl.Phys.. 95. 334-338 (2004)
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[Publications] T.Ichimura: "Local enhancement of coherent anti-Stokes Raman scattering by isolated gold particles"J.Raman Spectrosc.. 34. 651-654 (2003)
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[Publications] N.Hayazawa: "Detection of an individual single-wall carbon nanotube by tip-enhanced near-field Raman spectroscopy"Chem.Phys.Lett. 376. 174-180 (2003)
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[Publications] 井上康志: "入門 ナノテクノロジー:総論"ぶんせき. 349. 2-10 (2004)
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[Publications] 井上康志: "近接場ラマン分光を用いた分子イメージング"精密工学会誌. 69. 158-161 (2003)
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[Publications] H.Watanabe: "Tip-enhanced near-field Raman analysis of tip-pressurized adenine molecule"Phys.Rev.B. (in press).
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[Publications] 井上康志: "5.1近接場赤外顕微分光法、西岡利勝、寺前紀夫編著「顕微赤外分光法」"IPC. 271-292 (2003)