2001 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学を用いた心機能におけるアンギオテンシンIIの役割
Project/Area Number |
12136207
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松原 弘明 関西医科大学, 医学部, 助教授 (10239072)
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Keywords | アンジオテンシンII / AT1受容体 / AT2受容体 / ブラジキニン / 遺伝子改変動物 |
Research Abstract |
アンジオテンシンII(AngII)受容体には異なる生理作用・細胞内シグナルを持つ1型(AT1)・2型(AT2)サブタイプが存在する。AT1は細胞内Ca^<2+>、チロシンキナーゼにより細胞増殖、AT2はフォファターゼを介して増殖抑制に働く。臨床的にAngII受容体拮抗薬やACE阻害薬の心血管保護作用が確立したが、分子レベルでのAngII受容体を介する心血管作用は明らかでない。本研究はAT1・AT2遺伝子操作マウスを用いて、心肥大・心不全の病態形成におけるAngIIの役割を解明することにある。これまで心筋特異的AT1・AT2および血管平滑筋特異的AT2過剰発現マウスの確立に成功した。これらは国際特許を獲得している。下記にこれら遺伝子操作マウスより得られた成績を示す。1)心筋AT1-Tgマウスは心臓肥大に加え、胎生期後期には高度房室ブロック、新生児早期には致死性心室性不整脈で死亡した。これはAT1の心筋肥大・不整脈への関与を示唆する。2)心筋AT2-Tgマウスは正常マウスと同様に発育した。心筋AT2はT型Ca^<2+>チャンネル活性化を介して陰性変時作用を発揮した。さらに、細胞内酸性化を誘導してキニン産生酵素を活性化しブラジキニンの分泌を促進させた。これは心筋間質線維化を抑制させた。AngIIによる心筋細胞肥大やアポプトーシスへの関与は観察されず、これらの病態へのAT2の関与は少ないと考えられた。今後の方策心筋不全病態では心筋AT1発現量は減少しAT2発現量は増加する。AT1欠損マウスを用いた結果より、減少したAT1は心室性不整脈抑制・心肥大抑制にはたらく。一方、心筋AT2は心肥大には影響しないが、ブラジキニン産生を介して内皮NO-cGMP系を介して、線維化抑制・心筋障害保護・心筋電気活動の修飾など心筋保護作用が発揮される。心筋AT2シグナル機構の解明、動脈硬化モデルとの交配、実験的心筋梗塞マウスモデルの確立により、心筋病態とくに心不全での心筋AngII作用を明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kamihata H, Matsubara H 他7人: "Implantation of autologous bone marrow cells into ischemic myocardium enhances collateral perfusion and regional function"Circulation. 104・3. 1046-1052 (2001)
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[Publications] Shibasaki Y, Matsubara H: "Angiotensin type2 receptor inhibits EGF receptor transactivation by increasing association of SHP1 tyrosine phosphatare"Hypertension. 38・3. 367-372 (2001)
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[Publications] Fujiyama S, Matsubara H: "Angiotensin AT1 and AT2 receptors differentially regulate angiopoietin 2 expression and VEGF expression"Circ Res. 88:2. 22-29 (2001)