2003 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類細胞における損傷乗り越えDNA複製の分子機構
Project/Area Number |
12143204
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
益谷 央豪 大阪大学, 生命機能研究科, 助手 (40241252)
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Keywords | 色素性乾皮症 / XPV / translesion synthesis / DNA polymerase η / DNA polymeraseι |
Research Abstract |
ヒトDNAポリメラーゼηの欠損は、紫外線高感受性かつ高発癌性の遺伝性疾患である色素性乾皮症バリアント(XP-V)群の疾病をもたらす。この事実は、DNAポリメラーゼηが、ヒトの生体内で、紫外線による細胞死を抑制し、なおかつ、遺伝子の変異を抑制する機能を持つことを意味している。当研究者らは、色素性乾皮症バリアント(XP-V)群の責任遺伝子産物として、ヒトのDNAポリメラーゼηを単離・同定し、損傷乗り越えDNA複製反応について解析を行っている。DNAポリメラーゼηは、いわゆる損傷乗り越えDNA複製(translesion synthesis)を触媒する主要な酵素であると考えられる。従来、損傷乗り越えDNA複製は、損傷によるDNA複製の阻害による細胞死を回避する一方で、誤りがちなDNA複製を許容し、DNAの変異をもたらす機構と捉えられてきた。本課題においては、ヒトDNAポリメラーゼηが、如何にして、損傷による突然変異の誘発を抑制して、正確な損傷乗り越え複製を担っているのか、そして、他の損傷乗り越え複製酵素との関連などについて、試験管内および細胞・個体レベルで明らかにすることを目標として解析を行った。その結果、DNAポリメラーゼηは、損傷のないDNAよりも、もっとも主要な紫外線損傷であるシクロブタン型ピリミジン二量体に対して、より正確なDNA合成を行えることを明らかにした。ただし、DNAポリメラーゼηのヌクレオチドの選択性は低く、誤ったヌクレオチドも重合されうることがわかった。しかしながら、誤ったヌクレオチドを重合した場合には、DNA鎖の伸長効率は著しく低下したことから、反応は停止し、他の構成機能を持つタンパク質により、修正されると期待される。さらに、DNAポリメラーゼηのDNA結合能の解析を進めており、より詳細な反応機構の解明が期待される。これらと平行し、XPVモデルマウスの作出を進めている。また、129SV系のマウスでは、DNAポリメラーゼηのパラログであるDNAポリメラーゼιの欠損があることを見い出しており、今後、これらのDNAポリメラーゼの関連を明らかにするための基盤になると期待できる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shimizu, M., et al.: "Erroneous incorporation of oxidized DNA precursors by Y-family DNA polymerases."EMBO Reports. 4. 269-273 (2003)
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[Publications] McDonald, J.P., et al.: "129-derived strains of mice are deficient in DNA polymerase ι and have normal immunoglobulin hypermutation."J.Exp.Med.. 198. 635-643 (2003)
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[Publications] Jaloszynski, P., Masutani, C., et al.: "8-Hydroxyguanine in a mutational hotspot of c-Ha-ras gene causes misreplication, "action-at-a-distance" mutagenesis and inhibition of replication."Nucleic Acids Res.. 31. 6085-6095 (2003)
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[Publications] Higurashi, M., et al.: "Identification and characterization of an intermediate in the alkali degradation of (6-4) photoproduct-containing DNA"J.Biol.Chem.. 278. 51968-51973 (2003)
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[Publications] Bassett, E., et al.: "Efficiency of extension of mismatched primer termini across from cisplatin and oxaliplatin adducts by human DNA polymerases β and η in vitro."Biochemistry. 42. 14197-14206 (2003)
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[Publications] Niimi, A., et al.: "Palm residue mutants in DNA polymerases α and η alter DNA replication fidelity and translesion activity."Mol.Cell.Biol.. (In press).