2000 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物の自家不和合性遺伝子群の多様性の分子機構
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12206061
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
柴 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (20294283)
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Keywords | 自家不和合性 / S遺伝子座 / 非同義置換 / 転位性遺伝因子 / S-locus glycoprotein(SLG) / S-receptor kinase(SRK) / S-locus protein11(SP11) |
Research Abstract |
自家不和合性は植物が持つ自家受精を抑制する機構の一つである。本機構は同一染色体上に位置する複対立遺伝子Sで説明され、雌しべと花粉に存在する自己・非自己を識別する認識物質のS遺伝子型が一致した場合に不和合となる。最近、アブラナ類ではS遺伝子として雌しべ側のSLG(S-locus glycoprotein),SRK(S-receptor kinase)と花粉側のSP11/SCR(S-locus protein 11 or S-locus cysteine rich)が明らかになったが、これらはS系統間で非同義置換を伴う高度な多型を示していた。またアブラナ類のS系統は集団中に100程度存在するといわれており、この様な多数の対立遺伝子で構成される図式は免疫系に関わるMHC遺伝子座に匹敵する。申請者はS遺伝子座の多型形成のメカニズムを解明することを目的に、SLG,SRK,SP11遺伝子の周辺領域を含むS遺伝子座75kbを解析し、遺伝子内組換えまたは遺伝子変換に関わる様々な情報の収集を試みた。また他のS遺伝子座と詳細な比較を行い、上記メカニズムへの寄与が予想されるゲノム構造上の特徴についても考察した。 アブラナ類B.rapa S_<12>系統株のS遺伝子座を含む約75kbのBACクローンを解析したところ、SLG-SP11間とSRKの下流20kb付近に転位性遺伝因子がクラスターで存在していた。また他3系統のS遺伝子座と比較したところ、S遺伝子は系統間で遺伝子間の距離、転写方向等、非常に多様であったが、周辺のORFは保存されていた。さらにS_<12>系統とS_9系統間でハープロット解析を行ったところ、SLGの上流約10kbからSRKの下流約20kbの非コード領域はほとんど一致しなかった。またS遺伝子座内には複数の反復配列が確認され、その中には両系統で保存された約500bpの回文構造をした反復配列も見られた。 これらの結果からS_<12>系統間で多型を示す領域はS遺伝子とその周辺約20kb内に限定される。この領域には転位性遺伝因子がクラスターを形成していることからゲノム配列中に組み込まれやすい領域があると考えられる。またS遺伝子間で回文構造状の反復配列も含め複数の反復配列が見られた。S遺伝子座の多型は単なる点変異の蓄積にとどまらないダイナミックなDNA配列の挙動に因ると考えられるが、これらの事象はS遺伝子座の多型形成に遺伝子座内での転位・組換えが関与している可能性を示唆していると考えられる。
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Research Products
(1 results)