2000 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物脳神経系における領域特異化の分子機構の解明
Project/Area Number |
12210004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中福 雅人 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80202216)
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Keywords | 神経発生 / 転写因子 / 神経幹細胞 / ニューロン / グリア / 神経再生 |
Research Abstract |
神経系の初期発生においては、ニューロン・グリアの共通の前駆細胞である神経幹細胞の領域特異化おこり、これに従って特定の部位に特定の性質をもったニューロン・グリアが規則正しく分化する。一方、遺伝性神経変性疾患をはじめとする種々の脳神経疾患においては、しばしば特定のニューロンの特異的な変性、脱落が原因となっている。従ってニューロンの特異性決定の機構の解析は、本特定領域研究班の重要な課題のひとつである。しかしながら、この領域特異的な細胞分化を制御する分子機構の詳細は未だ多くの点が不明のままである。本研究では、Basic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子であるOlig2,Neurogenin2(Ngn2)に着目し、幹細胞の領域特異的分化における機能を明らかにすることを目的とした。Olig2,Ngn2は、ラット後脳・脊髄神経管の腹側において胎生10.5日(E10.5)に発現を開始し、E12.5では背腹軸に沿った特定の前駆細胞ドメインに発現していた。運動ニューロンの分化に関与するとされるLim3/4、Islet1/2、HB9と比較したところ、Olig2は運動ニューロンの前駆細胞と考えられる細胞群に特異的に発現していた。また、Ngn2は運動ニューロンおよび腹側介在ニューロン群の前駆細胞において発現が認められた。そこで、電気穿孔法を用いてニワトリ胚神経管における両因子の異所発現を試みた。その結果、Olig2およびNgn2の異所的な発現によって、神経管背側に異所的な運動ニューロンマーカーを発現した細胞が誘導された。このことは、特定のbHLH因子群の組み合わせによって特定の種類のニューロンの発生が制御されていることを示唆している。現在、種々のbHLH因子を組み合わせた異所発現によって他のタイプのニューロン分化にどのような影響が見られるかを詳細に解析している。さらにこの知見をもとに、胎生期あるいは成体神経組織内に残存する神経幹細胞を遺伝子操作することによって、特定の性質を持つニューロンを試験家内で誘導する技術の開発を進めている。
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Research Products
(1 results)